Monthly Silk News(絹だより) 
第214号(平成24年1月16日)
発行 社団法人日本絹業協会
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平成24年年頭所感
伝統産業の力の発揮を

                             社団法人日本絹業協会会長 高木 賢
  新年おめでとうございます。
 昨年は、未曽有の大震災に遭遇し、また、原発事故が引き起こされた大変厳しい年でしたので、年が変わったことをもって、まずはちょっぴり気分が転換した思いです。
 しかし、年が変わったというだけで事態の実質が変わるわけではありませんので、同時に、今年の課題を明らかにし、前進していかなければならないとの思いも新たにしています。
 その最大のものは、いうまでもなく、平成23年度3月末までにできた蚕糸絹業提携グループの発展と純国産絹製品の販売促進(そしてそのための純国産絹マークの普及)を図っていくことです。東日本大震災は、経済の各方面に大打撃を与えました。国民の意識においても、「安全第一」という感覚が支配的になり、「ゆとり」のある生き方からは若干遠ざかった感があります。絹製品の需要も例外ではありません。各提携グループ、各企業とも、苦難に遭遇していることと存じます。しかし、養蚕・製糸と染・織の伝統産業を基礎においている蚕糸絹業提携グループは、外国人のように、逃げだすわけにはいきません。
 苦しいでしょうが、原点に返って、土着と伝統産業の底力を発揮してやっていく以外にありません。多少守りに入るのはやむを得ないと思います。先の見えないときは、正しい方向をというより、むしろ間違いのない方向を見つけるべきだし、耐久力のある間違いのない一歩が肝要と思います。
 高校生の時に読んだ本に、「長い距離を走るときは、とにかくまずあそこに見える電信柱まで走ろう、という小目標を立ててそれを実行しつないでいくことだ。」と書いてあったことを思い出します。耐久力と小目的達成の積重ねあるのみとの趣旨です。
 そして、我慢して走っていれば転換点は必ず来る。いつか必ず来る攻めへの転換点を逃さないよう、世の動向に十分な注意を払いつつ、頑張っていきましょう。
秩父銘仙 解(ほぐ)し織り
新啓織物 新井教央

 江戸時代から絹織物の産地として栄えた秩父地方。銘仙とは、この周辺地域で織られた先染めの平織りの絹織物です。日本三大曳山祭りの一つとして有名な「秩父夜祭り」は別名、お蚕祭りと云われ、12月3日には最大の絹市が立ち、次第にお祭りが大きくなり、現在の優勢な祭りのかたちとなりました。この絹市で販売されていた布は、養蚕で繭を出荷した後、お金にならないくず繭を自家用の糸にし、織ったものが秩父太織(ふとり)といい江戸時代に織られていました、これが銘仙の前身となる織物です。
 当時は無地、縞、絣が主流でしたが、明治41年(1908年)に秩父の坂本宗太郎氏が「解(ほぐ)し織り、解し捺染」と言う画期的な技法で特許を取得し、大柄、多色の絣模様の織物を可能にしました。ファッション性と裏表が無い機能性が加わった銘仙は、たちまち人気を博し全国的に一世を風靡しました。普段着の着物に革命をおこし、庶民にも手に入り易い絹織物となり、絹が身近になりました。
 大正10年には1800万円(現在の貨幣価値で約900億円)の生産高、大正15年には90万疋(180万反)の生産量であったとのことです。秩父地域で働く人の7割が織物関連の仕事をしていたそうです。
 初期の頃には品質の良い物であったと聞きますが、爆発的な売れ行き、戦争、原材料の不足などにより、粗悪品も多く出回ったようです。時代が変わり洋服の普及と共に銘仙の需要は減って行きました。昭和20年代からは夜具、座布団、丹前地を中心に生産するようになりましたが、35年頃から広幅生地のプリントが出回りって生産が減り、50年代には大部分の解し織は夏物の掛夜具、座布団地の生産に移り現在に至ります。市内で解し織りを生産している機屋もわずかになりましたが、秩父産地では絣模様銘仙は絶えること無く生産され続けています。
 解し織りの技法は経糸に仮織りをし、その経糸に型染めを施した後、仮織りの糸を解し取りながら本織りの緯糸を織り込みます。それ故、解し織りと云われます。先染め織物ですが型染めなので、大柄、多彩な表現が可能です。裏表がなく、細番手の高密度な平織りで絹独特の光沢とシャリ感があります。軽く、着心地が良い織物となります。

仮織り
経糸への型染
仮織の緯糸をほぐし取る


 私どもの新啓織物は、父の啓一が昭和45年に勤め先の機屋から独立して始めました。当時、廃業をする機屋は多くありましたが、これから始めるという人は皆無で、秩父では最後に機屋になった、一番新しい機屋です。織機は大正時代に秩父で開発された半木製織機で製織しています。
 私は東京で繊維関連の会社に15年勤めていましたが、海外事業部で世界の織物に触れるうち、父の仕事、秩父の織物に魅力を感じ、6年前戻って来ました。
 新啓織物では、現在、解し織の座布団カバーと銘仙を中心に生産をしています。銘仙も新しい色柄、糸使いなど新たな試みで改良を行っています。
 最近では、国産の絹での製品作りにも取り組んでいます。現在は経糸に、「いろどり繭」(埼玉県秩父特産のいろどり繭)、緯糸は碓氷製糸繰糸の「ふい絹」(太繊度低張力糸)を使用して帯を製織しました。経緯とも、生糸を使用した解し織りの手法のもので、秩父産と京都産の柿渋の色差を利用し緯糸にしたものです。染め付き、手触り、締め心地が良くシワも伸び易いようです。

半木製織機にて本織り
縦糸:いろどり繭、緯糸:ふい絹の帯地

 今後とも、国産糸ならではの特徴ある糸で製品を作成してゆきたいと思っています。国産糸の使用は、ごく少量ですが、秩父の繭を使用した製品をじっくり手掛けて行きたいと思っています。
 現在、絹は高価でデリケートなものになってしまいましたが、もう少し身近に絹を感じられるような提案も必要ではないかと考えています。着心地が良く、取り扱い易い絹製品はどのようなものが考えられるのだろうか。現在、秩父産地の機屋は多く有りませんが銘仙の復活と新しい物作りが始まっています。
 それぞれの職人の後継者のいないことが悩みです。若い人が入って来られるような活気ある産地へと変化して行きたい。新しい試みを続けながら、機織を続けたいと思います。

純国産絹製品展示コーナーより


 ジャパンシルクセンターの 純国産絹製品展示コーナーでは、平成23年の後半に、以下の展示を行いました。

1、10月11日(火)〜11月4日(金)
  株式会社千總(ちそう)  
  展示製品:振袖、訪問着
  (株)千總(京都市中京区)は、きもののための豊富な絵柄等の蓄積を持つ老舗の京友禅のきものメーカーです。QCコードから生産履歴が分かります。(写真1

2、11月14日(月)〜11月30日(水)
  株式会社丸万中尾
  展示製品:江戸小紋
 (株)丸万中尾(滋賀県長浜市)は、長浜ちりめん(白生地)の老舗問屋です。江戸小紋用変一越は、シボをできるだけ小さくし緻密な表現を可能にしています。(写真2

3、12月12日(月)〜12月28日(水)
  織匠万勝
  展示製品:帯地、着尺(小紋)
  織匠万勝(京都市中京区)は、西陣織の製造卸問屋です。「きぬなり」のブランドで、春繭を使った国産糸と西陣織が持つ高度な技術との融合を目指しています。(写真3

写真1・(株)千總の振袖と訪問着
写真2・(株)丸万中尾の着尺(江戸小紋)
 写真3・織匠万勝の帯地と着尺(小紋)




●イベント情報

 入賞デザイン発表会 ─東京発表会─

第15回 全国きものデザインコンクール

◎ 日時:平成24年1月18日(水)〜19日(木)10:00〜18:00
           20日(金) 最終日  10:00〜16:00
◎ 場所:ジャパンシルクセンター 東京・有楽町 蚕糸会館1階
◎ 主催:全国染織連合会

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