第104号(平成14年9月1日)

「日本の絹」マークを制定

国産絹製品の良さを消費者にアビール

社団法人日本絹業協会

 社団法人日本絹業協会は、9月18日千代田区有楽町の蚕糸会館1階にあるジャパンシルクセンターにおいて報道機関をはじめとして農林水産省、経済産業省及び関係業界の関係者を招いて「日本の絹」マークの発表会を開催しました。

 発表会は、NHKなどで活躍されているキャスター須磨佳津江さんの司会の下で、日本絹業協会会長吉國隆氏が主催者を代表してマーク制定の趣旨とこれまでの経過等について挨拶をし、その後、農畜産業振興事業団の山本徹理事長の来賓挨拶などにつづいて発表会に特別に参加された東京きものの女王、谷本直子さんと大黒洋子さん等による「日本の絹」マークの除幕式と同マークをデザインした田中秀男氏の表彰等が行われました。

 日本の絹マークのデザインは、一般公募することとしてデザイン団体、デザイン関係の大学等に募集要領を送付するとともに、公募関係の雑誌に掲載したところ、863点の応募がありました。この863点について、東京芸術大学美術学部教授池田政治氏を選考委員長とする10名の選考委員による選考の結果、福岡県の上記田中秀男氏の作品が特選に選ばれました。

 田中氏の作品を選考委員長でもある池田教授の補正を経て日本の絹マークとして正式に決定し、商標登録(申請中)を行いました。日本の絹マークの制定の趣旨、表示の対象等は次のとおりです。

日本の絹マーク制定の趣旨

 わが国における織物。・きものをはじめとする絹・絹製品の生産、流通、消費は、長い歴史をもち、その過程で優れた技術や芸術性を培いながら貴重な伝統文化を形成してきています。

 近年、外国産生糸・絹製品の輸入増加により、このような絹文化を担う蚕糸・絹業の各産業が厳しい状況下におかれています。このような状況に対処するためには、養蚕、製糸、絹織物、絹製品生産流通の関係者等の協力により、国産シルクの消費促進を強力に推進する必要があります。

 このため、社団法人日本絹業協会は農林水産省及び経済産業省の指導の下に関係業界の支援を得て、平成13年10月に「国産シルク消費促進協議会」を設け、各界の委員、専門委員の参加をえて国産絹織物の表示等について討議を進めてきました。

 その結果、日本の伝統文化を担う国産の絹製品に「日本の絹」マークを添付して、消費者にアピールするとともに、その選択に必要な情報を提供することと致しました。

「日本の絹」マーク表示の対象

 「日本の絹」マーク表示の対象は、絹製品のうち、日本で製織された白生地並びに日本で染織されたきもの(反物、仮絵羽)及び帯とします。その素材(繭・生糸)が国産であるか外国産であるかまでは問いません。

 日本の絹マークの使用形態は、きもの(反物、仮絵羽)及び帯にはシール若しくはタッグ(以下「シール等」という。)を添付し、白生地にはスタンプを押印します。

 添付の仕組みは、@先染織物は、産地組合がその責任でシール等を添付し、A白生地は、織物産地組合の責任でスタンプを押印します。B染色加工品は、その生産に係わる染色加工業者又は染色加工業者に染め加工を委託したものが自己の責任でシール等を添付します。その場合は、白生地にスタンプが押印されていることを確認します。

 また、シール及びタッグには、添付した者の登録番号がついています。また、日本の絹マークの表示に併せて、織物素材や、織物の特徴、染色等の加工の種別、加工業者名等の情報を付加表示することもできます。

「日本の絹」マークの普及推進

 日本の絹マークの使用は、日本絹業協会の日本の絹マーク商標使用許諾が必要となります。日本絹業協会では、使用手続きに必要な書類の整備等を進めるとともに、実際にマークを付けていただく織物産地組合や染色加工業者等に対しマークの趣旨説明を行い、マークの普及に努めて参りたいと考えています。


絹が支える文化、絹を支える文化

財団法人 大日本蚕糸会・蚕糸技術研究所所長 村上毅

絹を支える文化

 前号で、幕末から明治時代が我が国蚕糸業の第二の発展期であり、新しい技術が次々に開発されてきたと述べましたが、我が国蚕糸業を世界の最高峰に押し上げ、その地位を不動のものにする上で、ハイブリット品種の育成と実用化は最も大きな意味を持つものでした。そこで、蚕の品種を通じて、絹を支える文化について述べてみたいと思います。

雑種強勢のこと

 一般に生き物の子は、その両親の中間的な性質を示します。両親が遺伝的に近過ぎると、その子は両親のどちらよりも劣った性質を現し、系統内で均質化が進むとやがて絶滅してしまいます。これは地球上の全ての生物に共通した性質です。

 これとは逆に、遺伝的に少し離れた両親から産まれた子は両親のどちらよりも優れた性質を示すことがあります。これを上手に利用したのがハイブリット品種です。蚕は日本や、東南アジア、ヨーロッパヘ伝わりそれぞれの地域で長い間飼い継がれることによって、地域種として分化していたことがハイブリット品種の成立に役立ったと考えられます。

見えない変化を感知する文化

 一代交雑種(ハイブリット品種)を利用する場合、交配親となる両親の系統をそれぞれ飼育、継代する必要があります、これが変化してしまうと一代雑種を作っても期待した形質を発揮してくれません。そのため、ハイブリット品種では次代の子が作る繭の大きさや重さ、繭糸の量や太さ、長さ、病気に対する抵抗性や発育の斉否などの実用的な形質が常に安定するように、親の世代で系統を維持しています。親の世代を遺伝的に均質化できれば、問題はないのですが、そうすれば、親の世代が劣化し、ついには絶滅してしまいます。

 そこで、品種の育成者は、次代の実用形質を安定的に維持することを目標に、親の世代で遺伝的な不均一性を維持し続けるようにコントロールする必要があります、つまり、毎年飼育する一代雑種や親の世代に現れる微妙な変化の兆侯を感知し、制御することで品種を維持し続けています。

 こういう技術とノウハウが蚕の品種を支えています。計測できないほどの変化や、見えない変化の兆侯を感知することは、雨に色を見、風に臭いや季節の変化を感じ、草叢になく虫の声を聞き分ける文化と共通するものだと云えるでしょう。

 実際、外国に日本の品種を持っていっても維持することができない事実は、国や民族が持つ文化の違いによるものとしか考えようがありません。

折合いをつける文化

 蚕の卵は、10g約2万粒を単位(箱)として取り引きされます。養蚕農家は一箱の種(卵)からより多くの繭がとれる品種を求めています。そのためには、一個の繭を重くするとともに、艀化した蚕が斉一に成長することと繭を作るまでの間に病気などで死んでしまわないように丈夫な蚕にすることが必要です。

 一方、繭の買い手である製糸業者は買い取った繭から少しでも多くの生糸がとれることを望んでいます。これに答えるためには、繭の重さに占める繭層の割合を高めることが必要です。蛹の割合を下げるようにすると産卵数を少なくする方向に動いていきます。極端な場合、雄の蚕だけを飼育すれば卵を作らない分、絹の生産効率が高くなります。しかし、このような品種は蚕の卵を製造、販売する蚕種製造業者から嫌われてしまいます。このように、矛盾し、対立する立場の要求を折合わせたところに蚕の品種が成り立っています。私はここにも日本人の持つ文化的特性が大きく影響していると考えています。

蚕の品種は人類の財産

 蚕の品種は日本で、飛躍的に改良されましたがその背景には、アメリカの絹織物業者の生糸品質に対する厳しい要求があったことも見逃せません。ナイロンが発明されるまで、人類は綿や羊毛など短い繊維を紡ぎ長い糸として利用していました。そのため、織物や編物に利用できる糸は太い糸になってしまいます。その中で絹は細く長い繭糸を何本か平行に引揃えることで長い糸を作ることができるため、他の繊維では不可能な細い糸を作ることができたのです。細い糸であれば薄く、軽い織物や透けるような織物も作ることができます。これは絹の大きな魅力の一つでもありました。

 しかし、薄い織物や編物ではちょっとした糸の太さの変化や節が目立ちます。そこで、太さのムラや節をできるだけ少なくするために蚕品種の改良や製糸技術の改良が進められてきました。その意味で、私は我が国の蚕の品種は「人類の財産」でもあると考えています。


社団法人全日本きもの振興会

「きもの学」300人の参加者が熱心に受講

 京都学園大学の「きもの学」の講座が九月三日から始まった。これは社団法人全日本きもの振興会の寄付講座として実施されるもので、九月の二十一日まで、前半の概論(三日から十一日まで)と、各論(十三日から二十一日まで)、合計九十分三十講座が実施された。

 初日は約三百人の受講者が早くから熱心に詰めかけ「前から席が埋まっていくのは珍しい」と大学関係者が感心するほど。第一講は全日本きもの振興会顧問の西村大治郎氏による「きもの学への誘い」第二講は服飾研究家の市田ひろみさんによる「通過儀礼の着こなし」で、経験豊富な両講師の巧みな講義に参加者は熱心にメモを取るなど勉強していた。

 なお、第一講ではなでしこ会、京都きものの女王OGなどが振袖、訪問着、小紋、結城紬、大島紬などを着用して参加していた。

 参加者のアンケートで、講師のきものへの愛情が感じられて印象深かった、その道の専門家の話なので楽しく聞かせていただいた、などの好意的な意見が寄せられている。

イ ベ ン ト 情 報

JA全農「秋のシルクコレクション」
JA全農養蚕対策室では、
日頃シルク製品をご愛顧いただいている皆様に
当会オリジナルブランドシルク商品を特別の価格でご提供いたします。
また、秋冬物の魅カある新商品を多数取りそろえて、
ご奉仕いたします。
日時:10月8日(火)〜10月10日(木)午前10時-午後6時
場所:ジャパンシルクセンター
主催:全国農業協同組合連合会(JA全農)

第3回 花と絹 絵染め展
色とりどりに花咲く絹のタペストリー、ふくさ、ショール。
日時:10月28日(月)〜11月1日(金)午前10時-午後6時
但し初日は正午より、最終日は午後4時まで
場所:ジャパンシルクセンター
主催:日本絵染め協会
協賛:大日本蚕糸科学研究所、ぺんてる株式会社
後援:ジャパンシルクセンター