第58号(平成10年 9月15日)

レディスファッション秋冬トレンド動向

「機 能 的 で ス ポ ー テ ィ ー」 がキーワード
ニューヨーク、東京の密接な関係

 今年の秋冬物は「アメリカンスポーティー」なディテールが主流になっています。ネックや袖、ブルゾンのヘム部分にドローストリング(引きヒモ)を施したアイテムが初秋物で好 評に推移するなど、消費者も好意的に受け止めているようです。
 アメリカを中心としたトレンドの発信は、今に始まったことではなくここ数年続いている流れです。その背景を探っていくと、興味深い点が浮かび上がってきます。

ヒモ使いでウエストを留める使用は多く見られる
「ノーベスバジオ・プリモパラッツオ」
98秋冬東京コレクションより

フードアイテムを自身のテーストで解釈した「ゴム」
98秋冬東京コレクションより

アメリカトレンドが広がった要因

 老舗メゾンのデザイナー交代がファッションマスコミ界を賑わせたのは記憶に新しいところです。
 「クリスチャン・ディオール」はジョン・ガリアーノ、「ジバンシー」はアレキサンダー・マックイーンをそれぞれ起用してメゾンの活性化に成功しました。フランスの老舗メ ゾンを英国人が、受け継いだとあって話題となりました。しかし、その後話題となったの はアメリカ人デザイナーでした。初のクロージング・コレクションを発表した「ルイ・ヴィトン」はマーク・ジェイコブスを起用した のを始め、「セリーヌ」のマイケル・コース、「ピブロス」のジョン・パートレットなどアメリカの若手デザイナーが次々とクローズアップされ機能的な「アメリカンスポーティー」に焦点が当てられました。
 このアメリカ人デザイナーの起用について、一部では『好景気に支えられるアメリカ国 内の顧客に向けての訴求を強めるために行われた。』という説も出ていましたが、機能性と着回しの利くアイテムを提案することに長けているアメリカ人デザイナーに注目が集まるのは当然の成り行きです。景気の低迷が続けば、ますますこの流れが強くなることも考えられます。

従来からアメリカンスポーティーを訴求している「シムラ」
98秋冬東京コレクションより

東京のデザイナーにも波及

 ニューヨークコレクションのすぐ後に行われた東京コレクションでは、ニューヨークの影響が色濃く繁栄されていました。色彩はライトからダークまでのグラデーションにレッドを差し込んだ提案が多く、着回し範囲の広いアイテムが充実していました。素材はウオーム感を前面に出したメルトン、フェルトなどか主流でした。見た目だけでなく、能面でも防寒に優れているコート&ジャケットが発表されました。前述しましたローストリングやゴム留めのパンツ、ファスナー・マジックテープ使いのブルゾンなどスポーティーなアイテムが各ブランドで打ち出されトレンドを表現しています。

今後はどうなる?−素材で差別か?−

 デザインが同質化したため、素材のオリジナリティーが大切になってきました。レディス市場では、既にカシミヤ素材のニットが堅調に推移するなど、良質の素材に対しては惜しみなく出資する傾向が出ています。そこで注目されるのがシルクや麻などの天然素材です。
 来春夏物に向けては各アパレルメーカーとも『天然素材回帰』の方針を明確にし、着心地重視の戦略を執っている模様です。シルク、麻素材の使い方によっては思いもよらないヒットアイテムが生まれるかもしれません。

(ファッションジャーナリストS・I)

※写真協力:日本繊維新聞社


蚕と遊ぶ

蚕に興味を持つ子供達

栃木県『繭の里』渡邉勝正

 栃木県の那須高原にある別荘村「繭の里」には、全国各地の養蚕婦人部の人々により製作された繭クラフトやシルクパウダー入り食品・化粧品、シルクの衣料品などを一堂に集めて展示・販売を行っている『絹の館』があります。
 当地は火山灰と高地のため、お米が平地の半分しか取れなかったことから「半俵」という地名がつくようなところでしたが養蚕は盛んに行われていました。四〜五年前までは「繭の里」周辺でも養蚕農家がありました。
 繭の館の多くの展示品の中に、約1反分の「繭」を球の中に入れて置いてありますが、子供はこれを見て「バターボール」といい、30才代以下の女性は繭からシルクができるのを知っていても「繭を初めて見た」と言う人が多く見受けられます。また、この地の周辺からも養蚕農家が激減していることもあって、昨年の繭の生産量が群馬県が第1位であり栃木県が第5位だということは全く知られていません。
 当館では繭やシルクについて楽しく知識を得ていただこうと、蚕糸・昆虫農業技術研究所や栃木県養蚕センターなどの協力のもと、あまり学術的にならずに興味を引くように「繭」利用の多様性やシルクと健康の関係について分かり易く展示を行っています。
 黄色やオレンジ・ピンク・緑色の繭、光る蚕や桑以外のものを食べる広食性蚕のパネル、シルクパウダーやシルクフィルムなども展示しています。

お蚕さんに興味を示す子供達

糸引の実演

 夏休みには、蚕を飼育して子供達と蚕が直接の触れ合う場を設け記念写真を取るなどしました。
 蚕を初めてみる子供達は、その姿を見て驚いたり「これはモスラだ」といったりしていました。また親の中には「繭」を見て蚕の卵と教える方もいます。このような誤った知識を持った方々に優しく蚕や繭の解説をするのは楽しい仕事でやりがいのある事です。
 「繭」は中に居る蛹を強い風や雨、強烈な光そして乾燥から守ってくれます。やがて一定の期間を経て蛾という成虫になって中から出てきます。繭は蛹という生きものを守り育てる力を持っています。だからこそこの繭からできた『絹』は人間も守ってくれるのです。
 館では時々コップに蛹とお湯を入れて「糸を引いて」見せます。すると子供達は大喜びで糸を引きます。そして必ず「中から蛹は出てくるの?」と質問します。そこで「出てくるよ」と答えるとまた夢中で糸を引きだします。しかし、私が「糸を全部だし終わるのには明日までかかるよ。この糸は1,500mあるんだから」と言うとびっくりした顔をします。

飼育展示

繭の館では毎年蚕の飼育をしています。
 今年も、7月23日に栃木県産業センターより『はくぎんと鏡光黄玉』蚕をいただき、飼育をしました。丸蚕箔に桑の葉を一枚一枚ハサミで切り落としたり、蚕の成長とともに、その量を増減したり部屋の温度を調節するためにクーラーを効かせたりして、その成長をまちました。
 8月8日の夕方に糸を吐き出した蚕が出始めたので「回転まぶし」に移し替えました。翌朝見ますと、薄く繭を作り始めていました。是非とも見学に来場されている子供達に見てもらいたいと思い、会場入り口にポスターを張り出した所たちまちに人だかりとなりました。


 薄い繭の中で蚕が、頭を8字に振りながら糸を吐き出し繭を作っている姿に見学の皆さんは大変感動していました。
 私は、大きい声で「皆さんは最高に幸せです。この姿は今日しか見ることができません。」と言うと、その姿をビデオやカメラに収めていかれました。
 数十頭の蚕ではありますが、毎日桑を取りに行ったりして世話をしていると、来年は面倒だから止めてしまおうと思ったりする事もありますが、この瞬間のお客様の感動した顔を見ますと、今年もやって良かったと思うのです。そして来年も繭の館で『おかいこ様』を飼おうと決心しています。


イ ベ ン ト 情 報

第15回染織作品展と秋のシルクフェア

〜横浜シルク博物館〜

−絹の染織作品を公募・審査し、その中から優秀な作品を展示します。
 あわせて、シルク製品の展示即売も実施されます。−

期間:10月3日(土)〜11月7日(土)午前9時〜午後4時
   休館日:各月曜日

場所:横浜シルク博物館横浜市中区山下町1番地(駐車場なし)
    最寄り駅JR・地下鉄『関内駅』下車徒歩10分

入場料:一般500円高・大学生200円小・中学生100円
    (20名以上団体割引・65才以上割引有り)