第62号(平成11年 1月15日)

新 年 の ご 挨 拶

社団法人日本絹業協会 会長 二瓶 博

蚕糸絹業関係の方々をはじめとして「シルクの会」更にはシルク愛好者の皆さん、平成11年の新春を迎え誠におめでとうございます。
ところで、日本経済が現在、不況のどん底にあることは、テレビ、新聞などの報道を待つまでもなく家計を預かる主婦の方々などが身をもって痛感しておられることと存じます。
このような不況に伴う所得減少を背景にシルク製品の売行ははかばかしくありません。ちなみに昨今の生糸価格は 3,400円台/kgと30数年前の水準に逆戻りして推移しているにもかかわらず、平成 9生糸年度(平成 9年 6月〜同10年 5月)の国内の絹需要は 239千俵と大きく落ち込んだ前年度の76%と更に大幅に下回っています。
他方、生鮮食料品の野菜に目を転じますと、台風や日照不足などの天候不順の影響があって秋口以降上昇を続け10月をピークにやや落ち着いてきたものの、東京9卸売市場の11月平均価格は 279円/kgと前年比55%高となっており、特にキャベツ、白菜、レタスなどの葉菜類は 4倍に跳ね上がっています。
何故このように同じ農産物であっても違うのか。
生糸・絹製品は衣料品で食べ物でなく、かつ嗜好性の高い商品ですが、野菜は生鮮食料品であり、生活に欠かすことのできない必需品であるからでありましょう。
生活防衛的な観点に立てば、他の支出を抑えてでも胃袋を満たす食料品の購入は不可欠となってきます。
国は「経済再生」を最大の課題として景気浮揚に取り組んでおり、近い将来において「プラス成長」に転ずることになりましょう。そうなって懐具合が良くなればシルク製品の需要も回復するでしょう。しかし「他力本願」だけでは好況を迎える前にへたってしまいます。今が「我慢の仕どころ」です。誠に厳しい現時点でも繭・生糸のブランド化による差別化された類稀な絹製品の作出・提供に意欲を持って努力している産地も全国的に多々見受けられています。例えば、極細繊度の『あけぼの繭』を使用して織りあげた松岡姫(山形)伸縮力の大きなシルクウェーブを用いての掛布団(群馬)などです。
新しい年こそ、真にシルクの良さがわかり、シルクを愛する方々の輪を広げつつ、日本経済の再生とシルク需要の回復の底固めの年になりますよう皆様と共々にお祈りして新年のご挨拶といたします。


9 9 年 春 夏 「 東 京 コ レ ク シ ョ ン 」に
              見 る ト レ ン ド は ?

 

グレーは消え、ホワイトが台頭

 先行き不透明な市況とは対照的に、99年春夏「東京コレクション」で提案された色は、ホワイトが圧倒的な強さを見せました。それも清く、純真無垢なホワイトが台頭しました。
 あるメゾンに至っては、すべてホワイトでアイテムを発表するなど、この秋冬に提案された不透明感の象徴であったグレーの配色は払拭された形です。
 なかでもデザイナーの中野裕通さんは、「ピュア」というキーワードを掲げ楽しく明るいコレクションを発表しました。「作品や自分にもピュアな気持ちで取り組みたい」として、アパレル市場の暗い話題の多い中モヘアニット、ベールトーンのニットワンピースなど意欲的な作品を発表していたのが印象的でした。
 そのほかのコレクションをまとめると、限りなくホワイトに近いトーンや生成りが多く発表され、)同時にナチュラル志向がのコレクション進んでいることもうかがえます。

見る人を楽しくさせる「ヒロミチ・ナカノ」(中野裕通)のコレクション

ナチュラル志向は継続も
、風合いを殺した素材感。核はシルク、リネン

 春夏物ということで素材感は、清涼感のあるものが大半を占めました。ただし、従来と違うのは、素材本来の風合いを殺したものが目立つということです。
 薄くいまにも破れそうなペーパーリネン、コットンで作り込んだ素材でありながら、歩くと“シャリシャリ”音がする生地や、紙の押し花を貼りつけたようにジャガードされたオーガンジーなど乾いた感触の生地・表面感が主流になるようです。
 また、シルク素材は、より消費者の手に届きやすいアイテムに作り込まれています。それぞれのデザイナーたちは、クオリティーを維持しながら求めやすい価格で消費者に提案しようと努力の跡が見えます。

ペーパー状になったリネン素材で独自性を強調した「シムラ」(志村雅久)

透け感は「魅力的」と「退廃的」という
        両極のモチーフで……

 透ける生地を幾重にも重ね、フェミニン&セクシーさを前面に出すアピールから、服のあらゆるところにスラッシュ(切れ目)を入れ世紀末を暗示するモチーフまで、様々な仕様が採用されました。
 代表的なのは背中を大胆に開け、タスキ状になったヒモだけでフロント部分を支える仕様です。着るというより肩に引っ掛けるようなフォルムで何とも魅力的な姿に見せています。一方、退廃的なスラッシュはドレスの胸元、大腿部を露出させ前述したセクシーさとは一線を画す訴求です。
 どちらも「肌を見せる」という意味では一致しますが、ブランドの個性によって打ち出すイメージが大分異なります。
この春や夏には、一味違った肌の露出で男性の視線を釘付けにしそうです。  (S.I記)

ホワイトを主力にアルミ素材を組み合わせた「ジュンヤ・ワタナベ」(渡辺淳弥)

包帯を巻いたようなフォルムも登場した「I.S.スナオ・クワハラ」(桑原直 )

         写真協力:日本繊維新聞


イ ベ ン ト 情 報

第6回 国際テキスタイルコンペティション’99−京都−

テーマ

染織の感性−21世紀へのメッセージ

主 催 国際テキスタイルフェア開催委員会

開催日時 平成11年2月1日(月)〜14日(日)

開催場所 京都文化博物館 京都市中京区三条高倉 075−222−0888

共 催 京都府・京都市・京都商工会議所・染織関連団体

後 援 通商産業省・中小企業庁・外務省・文化庁 他