第72号(平成11年12月15日)

横 浜 「 シ ル ク 博 物 館 」 新 装 開 館

シルク博物館学芸員 柴本秋男

  シルク博物館は横浜開港 100年記念事業として、神奈川県・横浜市・関係業界の協力によって、昭和34年 3月、開港当初英国商社ジャーディン・マセソン商会(英一番館)のあったところに、シルクセンター国際貿易観光会館が設立され、その重要な一事業部門として開設され、世界的に有名な日本の民族衣装「きもの」を中心に、シルクの科学・工芸の博物館として内外の多くの人たちに親しまれてきました。

注目を集める華麗なシルク

 本年、開館40周年を迎えるにあたり 5月中旬より館内を大改装し、40周年記念事業とし布て10月14日新装開館しましたのでご案内致します。 改装にあたっては、子供から大人までわかりやすく見学できるように心掛け、また昨今業 界の内外で話題をよんでいる黄繭(黄繭糸)をシンボルカラーとして改装しました。
 まず、メーンエントランスに導かれる海側の階段、シルクセンタービル内側サブエントランスからの誘導通路は黄繭を思い起こさせる黄色を基調にデザインされ、正面入口に誘導されウエルカムコーナーへ、ここには大きな八丁撚糸機が置かれています。この入口を入るとすぐ「絹との出会い」ゾーン、右側には寝室・洋室・和室に分かれそれぞれ私たちの身近な生活(衣・食・住)の絹への応用がジオラマのように展示してあり、左側には繊維の広がり・絹の広がり・これって何粒(衣服を作るのに必要な繭の数)等が実物・パネルなどで見ることができ、衣食住にわたり広く様々に使用されている絹の利用法を分かり易く紹介しています。
 次に「学習ゾーン」、蚕の一生や繭から糸にし、織物になるまでの工程、世界各地に棲息し繭を作る昆虫(蛾・繭等の実物や写真)、そして小学生から大人まで利用できる図書コーナー、繊維素材等を触って楽しめるコーナーも作りました。またこのコーナーでは、 4月〜10月まで蚕の飼育実演を行ったり、誰にでもできる機織り体験(開館中はいつでも織れます)も実施しています。
 続いて「絹のあゆみ(世界編)」ゾーン、アジア・アフリカ・ヨーロッパ等各国の歴史、風土から生まれた特色ある民族衣装を展示しました。また世界の服飾史やシルクロード、繭や生糸等をパネルや実物で展示し服飾史や蚕糸・絹業の変遷を学ぶことができます。 階段の側壁にそって展示した洋装の変遷パネル写真を見ながら 2階に昇ると、ゆったりとした広間になっています。お疲れの方はここで一休み、ビデオコーナーもあります。
 ここからが「絹のあゆみ(日本編)」ゾーンの始まりです。服飾歴史年表で服飾史を学び、古代から現代までの各時代における代表的な衣装が時代考証のもとに復元され展示しています。また世界の民族衣装の中でも、とりわけ美しいと言われる「きもの」の織りや染めについて代表作品(人間国宝の染織作家等)を展示しています。
 横浜繁栄の基盤となった横浜シルクロード・絹と横浜のパネル、人間国宝マップ、歌麿や広重の描いた養蚕や織り関係の錦絵、そして現代作家の代表的な作品と盛り沢山の展示品を 堪能していただけます。
 なお、今回の改装で、絹専門のミュージアムショップを開設し、絹製品を始め蚕糸・染織関係の書籍等の販売を行い、少しでも絹需要促進のお役に立てばと願って織ります。是非お立ち寄り下さい。
  明るく、見やすく、誰にでも分かるようにをモットーに改装したシルク博物館、ホールも明るくなり展示会、講演会等にも利用できます。皆様のご来観をお待ちしております。

◎開館時間 9:00〜16:30(入館は16時まで)

◎休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)年末年始

◎入場料 一般 500円、シニア(65才以上) 300円、高・大学生 200円、小・中学生 100円

*20名以上団体割引有り、障害者は無料、特別展は別途料金


「 伝 統 工 芸 ふ れ あ い 広 場 ・ 静 岡 」 開 催 さ れ る

駒沢女子短期大学 水出通男

去る11月18日〜21日に「’99伝統工芸ふれあい広場・静岡」が静岡市のツインメッセ静岡・北館で開催されました。これは(財)伝統的工芸品産業振興協会が、わが国の伝統的な工芸品産業の振興・発展を図るために、毎年この時期に全国主要都市に場所を変えて全国伝統工芸士大会と併せて開催しているものです。
 伝統的工芸品産業振興会は、蚕糸・絹業をわが国の最も重要な伝統産業の一つとして位置付けて、例年会場の最初の広い場所に「織りの広場」を続いて「染の広場」を設けて、結城紬や大島紬・西陣織・つづれ織・友禅などの著名な絹染織物の展示と伝統工芸士の皆さんによる染織の実演を行いました。

糸繰機を興味深く見る

 ジャパンシルクセンターでは「織りの広場」の入口に設けられた「繭から生糸まで」のブースで「蚕の一生」や絹の性能を示すパネル類を展示するとともに、蚕糸・昆虫農業技術研究所製糸技術研究チームの協力を得て、繭と生糸、1緒繰り繰糸機などの現物を展示し、繰糸の実演を行いました。
 見学者の皆さんには、繰糸の実演が特に好評で、繭から繭糸が途切れることなく次々とほぐれ出していく様を見て、また、煮繭(にまゆ)を手にして繭糸を引き出してみて繭糸の繊細さと強さに感嘆し、現場に長く留まって説明者に質問の矢を浴びせてきました。
 参考までに質問の多かった順に紹介しますと、1.繭糸の長さ・太さは?2.途中で繭糸が切れることはないか?3.切れた繭糸はどう繋ぐのか?4.糸口はどう探すのか?5.繭糸何本で織り糸になるか?6.きもの一反に繭は何粒必要か?7.生糸と紬糸の違いは?などのほか、人工飼料育繭と桑葉育繭との品質差、輸入製品と国産品との品質差、絹が健康によい理由、などでした。
 日本人は世界の中で最も絹を愛好する民族で、経済の不況下にあって減少したとはいえ全世界の生産量の20%強(生糸量に換算して年間約20万俵余、 1俵=60kg)を消費していますが、消費者の多くは絹がどのように作られたかを知らず、絹の美しさや着心地の良さの根拠も理解していないようです。絹の需要拡大を図るとともに蚕糸・絹業をわが国の誇る伝統産業として存続させるには、先ず消費者に絹の素晴らしさを理解してもらうことが大切であり「伝統工芸ふれあい広場」への参加が極めて有意義であることを実感しました。
 この催しでは織り・染めのほか、陶磁器、漆、和紙、文具、金工、木工、竹細工その他の工芸品を展示するとともにその生産過程の実演も行われており、居ながらにして国内のほとんど全ての伝統的工芸品の実態にふれることができます。ちなみに、入場は無料で、来年は盛岡市で開催される予定です。読者の皆さんも是非にご来場下さい。


紡 ぎ を 着 る その4

ツムギ製法技術研究会 西城正子

乾燥

絞っておいた真綿を 5枚一度に両手で両端を持って、深水の中で左右にぎゅーぎゅーと絞り洗いをしてアク抜きをしてから脱水します。
1枚ずつ広げて 2人で向かい合って両角を持ち、互い に真綿を対角線状に 2〜 3回引き合って形を整えます。
針金を張ってこれに掛け自然乾燥します。

束装・仕上げ

 真綿の仕上げは、四角形の台の上に太い針を 4本立ててそれに一定量(37.5g )を重ねていきます。
 1.秤分けた真綿は、ここでも 2人で向い合ってそれぞれ角を持ち、軽く引き合って形を整えます。針に耳を薄く、しかし外れないように順次重ねていきます。
 最上面に当たるものは斑の無い均一に展綿された美しいものを選びましょう。
 ※とじ糸の作り方…薄い真綿の真ん中に穴を開け均一に伸ばして1.3m位にして何本か作っておきましょう。
 2.四角の留め方…角留めは、針を 1から入れて 2へ斜めに出し、3から 4に針を掬って出し、 2と 3の糸に下から潜らせて引上げ 1の糸としっかりと結びます。

 3.菱形飾り
 飾り糸を通した針を 1に上から入れて重ねた真綿をい掬い外側から 1の糸の右側を通って 2に入れます。
 同様に外側から 2の糸の右側を通って 3に入れ、 4と進んで、 4の糸の右側を通って最初の 1の糸端と結んで菱形を作ります。糸端は、 5cmくらい残して切り、松葉を置いたように内側へ向けて飾ります。

真綿から糸を紡ぐ

先ず真綿から糸を紡ぐには、先に真綿を染めます。糸にしてからの染色は骨が折れます。
真綿の染色
 1.被染物の重さを秤ます。
 2.染料は1.の重さの1%にします。
 3.酢酸は1.の重さの5〜7%とします。 4.前後処理 真綿は1枚づつ四つ折にして水に沈めておきます。30分したら全部一緒にして脱水します。
 5.染液は(浴量)4.の水に沈めた状態より多めにします。染料はお湯で溶いて入れてから40℃まで上げて一旦火を止めます。
 6.四つ折の山を竹箸で挟んで染液に泳がせ、染料になじませ別容器に取ります。
 7.全部泳がせ終えたら、染液に戻し、再び点火します。30分位で90℃まで上がるように火を加減をします。途中60℃〜65℃で酢酸を入れますが、2回に分けて被染物は手前に寄せて、酢酸が直接かからないように注意しましょう。酢酸を入れたら混合させます。また鍋底に被染物が停止しないよう撹拌します。
 8.洗浄・乾燥 初めに脱水します。その後 2〜 3回濯いで脱水します。一枚ずつ広げて針全を張って掛け、自然乾燥します。注真綿は直接染液に入れたりすると水分を含んで重くなり、染料の染みこみが悪く、染ムラの原因になるので手順を追って染色を進めましょう。

真綿の紡ぎ

 1.角真綿は何枚か重なっているので 2〜 3枚に剥します。次に小判形なら三等分に、大判だと四等分に切って横長の短冊にします。
 2.横長の短冊を左手に持ち、手前から屏風畳みにして軽く握りこみ、最後の端の上部から糸端を引き出します。紡ぎ方は何れの時も前号同様に、ガイド糸に絡ませながら糊をつけて目的の糸を紡ぎます。


イ ベ ン ト 情 報

 

第11回 ま ゆ ク ラ フ ト 展

◇主催:全国養蚕農業協同組合連合会

◇開催日:平成12年1月15日(土)〜23日(日) ただし17日(月)休館日

◇場所:シルク博物館(横浜市中区山下町 1)シルクセンタービル 2階

◆展示内容:まゆ人形、まゆフラワー、まゆ絵などの工芸品