第76号(平成12年5月1日)

発行: 社団法人日本絹業協会・ジャパンシルクセンター

ハイブリッド絹展2000報告

シルク開発センター  専務理事 藤田隆男

 平成12年2月8日(火)から10日(木)まで、『ハイブリッド絹展2000』を、有楽町の蚕糸会館6階会場で開催したのでその概要を報告します。ハイブリッド絹展は、平成2年10月に第1回を開催していらい、方面のご支援に支えられて、今回で10回を数えました。今回のハイブリッド絹展のキャンペーンワードは、『シルクって健康と自然にこんなにいいんだぁ〜・・』でした。

 シルクが、我々の衣生活に極めて好ましい素材であることを強調するとともに、シルクが、自然から生まれて自然に帰るときもそれに負荷をもたらすものではないこともあわせて訴えようとしました。

 このキャンペーンワードを示してハイブリッド絹展の出展を公募したところ、オーソドックスな分野から、かわり種とも思われる種類のものまで総数約450アイテムの出展を得ました。

 出展分野でメインは、シルク新素材の開発普及を促進するというこの展示会開催の主目的を達成するための新素材糸による試作研究作品でした。


ずらっと並んだ試作研究作品の数々

 本年度の試作研究の素材は「キュプラトシルク」。この素材は、キュプラを芯糸と(20d.)、シルクを鞘糸(40d.)にしたスーパーハイブリッドシルクです。キュプラはコットンリンター等を原料とする再生繊維で、シルクと同等の自然素材と言えるのではないでしょうか。

 互いに馴染みの良い素材どうしがハイブリッドすることによって両者のいいとこどりを狙ったものです。

 とくにキュプラは比重がシルクより大であるという特性があるので、その製品はシルク100%のものよりドレープ性がかなり優れているという長所を持っています。着心地は絹、ドレープ性はキュプラ、という言葉が当てはまるでしょう。試作研究者は20者(社)でした。

 地域ブランドシルクの出展では、県、市町村などのご支援のもとに製作考案された力作が多数あったことが目を引きました。

 個人やグループの作品が町当局をコーディネーターとして出展される作品が多くなりつつあります。こうした傾向は今回でも強くありました。

 このコーナーで注目されていたのはツムギ製法技術研究会の作品です。スーツ(婦人用)は、絹の手紬糸を手織機で織ったもの、天蚕手紬糸を手織機で織った布を用いた和装用のバッグ、ぞうり、小物入れはとても素敵との評判を得ていました。

 試験研究機関からの出展では、蚕糸・昆虫農業技術研究所製糸技術研究チーム(岡谷市)出展のシルク100%のランプシェードが多数点灯されて、文字通り人目を集めていました。


清水学園の先生や生徒の皆さんに説明する勝野氏

 蚕糸科学研究所のキュプラトシルク使いのブラウス、キャミソールやテンセル糸とシルクを交織したブレザー、ジャッケット等が出展され新しい発想であると注目されるとともに、テンセルの今後の展開に多くの関心が集まっていました。繊維工業試験場、蚕糸試験場、工業技術センター、研究所等からは基礎的な研究品や先端を行く研究成果品の出展がありました。試験研究機関のコーナーではこのほか、地域の研究グループを指導して製品化した作品が出展され、研究機関の果たしている役割が注目されていました。

 一般出展のコーナーも多様な出展品を見ることが出来ました。下着、セーター、ショール、マフラー、等々はどれもデザイン・染色に斬新なものが多く、しかもこれらが実用品として定着しているところに大きな意義があるとして評価されていました。


「地域ブランド」の一つ「山形県・置賜紬」

 シルクの実用新製品としては、今回は多数の出展がありました。遠赤外線繊維とシルクを使用した健康用品、肘・膝サポーター等が注目されていました。また絹の洗濯に好適な洗剤が入場者に配布され、シルクの洗濯が家庭において普通にできることを広報していました。

 以上、ハイブリッド絹展2000を掻い摘んで紹介させていただきました。今後ともシルク産業の発展振興にこの展示会がいささかでも貢献できるよう努力を重ねてまいる所存です。関係各位の相変わらぬご支援をお願いする次第であります。


    
東京農工大学繊維博物館友の会絹研究会

境 京子

 東京農工大学工学部の正門を入ってすぐ右手に、木立に囲まれて繊維博物館の建物があります。1979年に当時の館長であった金子六郎先生が、博物館の活性化をはかって「友の会」をスタートさせて今年で20年になるといいます。

 静かなたたずまいの博物館内が、繊維に関する12のサークルが活動する火曜から土曜までは活気に満ちて、動く博物館に変わります。「あなた方(の活動)は動く博物館です」とおっしゃる並木先生の言葉は、たぶん動態博物館を表現しているのでしょう。

 絹研究会は、1997年にマネージャー6名、会員12名で「友の会の末っ子のサークル」として誕生しました。この遅れてきたサークルには、それ以前の1994年に設けられた特別サークルとしての3年間の活動がすでにありました。1年目18名、2年目7名、3年目は増員して12名による3年間の活動が認められ、晴れて「友の会」のサークルとして位置付くことが出来ました。

 しかし、絹研究会が生まれる土壌は更にさかのぼって、1989年の工学部附属繊維工場の中にありました。当時まだ在職中の小此木エツ子先生が、工場を試験的に地域に開放され集まった私たちに「絹」への思いを語り、糸つくりを基礎から教えて下さいました。座繰りで糸を挽くだけではなく、多条繰糸機を動かして製糸作業もすすめられていきました。機械の前に立つのは若い娘さんならぬ私たちおばさんでしたが、機械の騒音はまさに製糸工場そのものでした。


真綿を作るために繭を開く

繭から糸を繰る

 養蚕から絹糸までの学習は、私たちがこれまで経験したことのない未知の世界でした。このような場があることすら知りませんでしたから…やること、なすことすべて新鮮であり、ひたすら感激の連続でした。しゃけん−車検−煮繭と、文字変換が容易になるまでに随分時間がかかったように思います。それと蚕糸に関しては、歴史的にいっても漢字をあてはまめ理解できることが多々あって、先生の講義のたびに糸へんの漢字が頭の中をぐるぐる回り、当分は漢和辞典が離せなかったことを懐かしく思い出します。

 繊維工場閉鎖の動きのなか是非残してほしいと願いながらの学習は、先生も私たちも一所懸命でしたから、体育館のように広い工場に熱気がただよっていたように思います。

 繊維工場が博物館の別館として存続が伝えられるなか1993年小此木先生が退官になりました。工場での学習も当然のこと終わりました。しかし、せっかくともされた「絹」の灯を消してはならないと、残った先生方の尽力によって、前述の特別サークル「絹研」につながり、続けて12番目の「友の会」サークル誕生につながっていきました。

 その後、繊維工場はコンパクトに改修され博物館別館となりましたが、工場内の設備が遅れてサークル発足に間に合いませんでした。それで学習室も博物館近くのプレハブの一室でしたが、2000年4月から念願の工場に移転、二階に学習室も用意されて名実共に絹研の活動の場となります。そして、新しく育ったマネージャーのもと本当の意味での絹研の出発になります。振り返ってみますと、旧工場内で始まった学習からすでに十年の歳月が過ぎておりました。

 サークルが正式に発足する際、私たち旧マネージャーは、その名称をめぐって何遍も話し合いを重ねた結果、「絹研究会」に落ち着きました。ところがカリキュラム(サークルになると館に提出が義務づけられる)の作成にあたって、内容をどうするか、絹と一口に言っても漠然としていて、どこから入ってよいいやら実技が先か、理論が先かなど試行錯誤の連続でした。それに期待していた工場がすぐに使えず、工場内での活動がカリキュラム通りに運べないこともありました。繭の山を目の前にして、取りあえず真綿づくりに専念することになります。おかげで全員が、日本真綿協会の発行する「真綿がけ技術保持者登録証」をいただくという、思いがけない大きな副産物を手にすることができました。

 蚕、繭、繰る、撚る、練る、紬ぐ、紡ぐなど、どこから入るにしても、小さな繭一ケ、細い一本の繭糸が絹研の活動の原点です。そして、繭がもたらす絹素材は、工程を経るごとに表情をかえそれぞれ主役になるところがよく、創造の夢も限りなく広がるところがおもしろいのです。今では絹素材を持て余すことなく、自由自在に使いこなしています。小さな繭が、さまざまな課題を投げかけてくれる、それに向かって会員同志が学び合う楽しそうな状況が生まれています。

 一方で…真綿って絹なの?、結城に紬の学習に出かけ、干してあるかんぴょうみて、「さすが結城ね、緒糸が山ほどある」といってははしゃぐ会員達。絹を全く知らない人たちだからかえって戸惑うことなく素直に「絹」に向き合うことができるのでしょう。絹研は、絹の歴史の上では瞬きにもみたない存在でしょうが、だからといって伝統や伝承をおろそかにせず、現代に生きる私たちにふさわしい新しい絹の道を探ってほしいと願っております。限りなく伝統的に、限りなく現代的に絹をとらえてほしいのです。

 

 

 

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日本絹の里 第4回企画展

製糸〜近代化の礎(いしずえ)〜

近世の群馬で最も重要な産業となったのは、養蚕・製糸業でした。
今回の企画展は、製糸技術の変遷や国内外の製糸技術の工程、
製糸業の発達過程を群馬県中心に紹介いたします。

日  時

4月28日(金)〜6月12日(月) 9:30〜17:00

会  場

日本絹の里(群馬県群馬郡群馬町金古)

交  通

JR前橋駅からバスで30分、日本絹の里前バス停下車徒歩1分

JR高崎駅からバスで20分、金古四つ角前バス停下車徒歩20分

前橋インター、前橋方面出口から出て、
6つ目の信号(NHK前)を左折後、
すぐの信号を左折して群馬町方面へ20分

主な展示

製糸の道具・製糸の工程・いろいろな生糸・新しい製糸の製品等

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手作り真綿の講習会

古くから日本の養蚕農家では、真綿を作ってきました。
シルク博物館では、真綿作りの貴重な技術を次の世代に伝えるために、
「手作り真綿の講習会」を開催します。

日  時

6月8日(木)・10日(土)・15日(木)・17日(土)・22(木)
7月1日(土)・6日(木)・8日(土)

全日 10:00〜15:00まで

会  場

シルク博物館(横浜市中区山下町1番地シルクセンター2階)

申込方法

シルク博物館に直接お電話でお申し込みください。

電話:045−641−0841

募集人数ほか

成人対象、各回6名(先着順)、講習料無料(入館料別)

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【 予 告 】

夏の「グランマルシェ」開催

7月3日〜6日

シルクセンターでは、最高のシルク製品を準備中! ご期待下さい。