第80号(平成12年9月1日)

発行: 社団法人日本絹業協会・ジャパンシルクセンター

 

最新中国蚕糸事情 (その1)

農畜産業振興事業団 副理事長 窪田 武

 我が国の繭・生糸の生産は、養蚕農家を取り巻く環境の変化等により、減少の一途をたどっており、特にここ数年は毎年20〜30%もの減産となっています。一方、世界有数の消費国である我が国の絹・絹織物の需要は、景気の低迷や和装離れなどにより減少してきてはいるものの、依然、生糸換算で毎年20万俵余りの需要量を保っています。

 このため、我が国の国産繭の自給率は5%を割り、絹の需要の殆どを海外からの輸入に依存せざるを得ない状況になっています。したがって、我が国の生糸・絹需給のより的確な見通しを図るためには、海外の生糸・絹の生産事情や流通事情をよりグローバルな見地から把握することが必要となってきており、特に世界最大の生産量を誇り、また我が国の最大の生糸・絹の輸入先である中国の動向を知ることが一層重要となってきています。

 農畜産業振興事業団では、その前身である日本蚕糸事業団が生糸の一元輸入を実施していた頃より、中国の蚕糸事情調査をほぼ毎年継続して実施しており、今年も5月に主として養蚕地帯を中心に現地調査を行いましたので、その成果の一端を御紹介することとします。

1  中国蚕糸業の現況

 中国の繭生産量は、94年の78万トンをピークに年々減少し、97年には42万トンとなりましたが、それでも世界の総生産量62万トンの約70%を占めています。99年は約40万トンで、2000年には約42万トンと計画していますが、今回の調査によれば全国的な干ばつの影響により、計画達成は困難な状況にあると見られます。

 生糸の生産量も、95年の約11万トンをピークに近年減少してきており、99年は4.8万トン、2000年も計画している5万トンを若干下回るものと思われますが、それでも世界の生糸総生産量の60%を越える水準は保つものと思われます。

 中国の生糸・絹製品の輸出量も、近年減少してきていますが、景気回復のきざしが見える東南アジアやインド向け輸出はすでに回復基調となっています。ヨーロッパ・アメリカ向けは相変らず停滞していますが、生産の方が若干弱含みに推移している状況を見ますと、需給は堅調で、価格もむしろ上昇基調と見受けられます。

陝西省千陽県の桑園(右側筆者)
             

2 現地の状況

(1)養蚕地域

今回の現地調査は、春蚕の時期(5月)を選んで、四川省と陝西省で行いました。四川省は綿陽市游仙区で、成都市から北東に125km、海抜460mの水田地帯に、陝西省は千陽県で、西安市から北西200 km、海抜810mの畑作地帯にあります。我々は、それぞれの桑畑や農家の庭先まで訪れることができました。 両地区とも、零細な家族経営で、年4回の掃立てで、今回は丁度春蚕(3令)の配布を受けたところでありました。桑の葉は1枚1枚丁寧に摘み取り、竹細工の飼育器で育てていました。桑の葉は今年は干ばつで出来が悪いとのことでしが、見た目には立派なものでした。四川省では水稲の田植えを、陝西省では小麦の刈り取を行っていましたが、こちらの方も機械化されている様子は見られませんでした。

(2)製糸工場

 四川省と陝西省で1カ所ずつ製糸工場を訪れました。四川省の工場では、昨年産の繭の最後の分を使って操業しており、あと6月中旬に春繭が出回るまで休止するとのことであり、陝西省の工場はすでに原料不足のため休止中でした。繭不足は地方の工場にも波及しているようです。動いている機械は、自動式と多条式が半々でしたが、陝西省の工場の方は、95年に新設されたばかりですが、機械は中古の旧式のものを使っているようでした。

四川省徳陽市柏隆製糸織物工場
上・ずらっと並んだ製糸機
下・生産された生糸

(3)その他

 人工飼料による蚕飼育研究所や養蚕試験場にも訪問しました。中国では、人工飼料による人工飼育は、労働力が豊富にあるためか、必ずしも熱心でなく、研究所にも、きちんと束ねられた新鮮な桑の葉が置いてありました。養蚕試験場では、実験圃場で数多くの品種の桑が植えられていて、特に干ばつに強い桑を作りたいとのことでした。

 ここら辺に、我が国の桑の品種、栽培、収穫技術、新しい蚕種やその飼育技術などにつき、引き続き中国との間の協力関係を維持するヒントがあるように思えました。            

(以下次号につづく) 


               

シルク製品の簡単なお手入れ方法

 9月に入っても残暑が続く毎日ですが、今月の末には衣替えの季節です。シルク製品を長くご愛用いただくために「簡単なお手入れ」の方法をご案内いたします。

1 外出から帰宅したらちりをよく払いましょう。この際、強いブラッシングは禁物、きものの場合にはビロードの小ぶとんでちりを払っているくらいですから、柔らかなブラシで、織り目に沿って、やわらかく払い落とします。ハンガ−に掛け、ぬくもりをとりましよう。ハンガーに掛けて風通しが良く直射日光に当たらない所に吊します。このことは体のぬくもり、汗などによる湿気を払うとともに、ある程度シワを伸ばす効果があります。ハンガーは、針金ハンガーでなくスポンジなどで覆ったものを用いないと形くずれの原因となるので注意します。

2 アイロンの掛け方

(1)シワの処理については、ハンガーに掛けることによって、かなりのシワが除去できますが完全に取り去るにはアイロンを使用します。

(2)シルク製品のアイロン掛けの場合は、必ず木綿などの当て布をして、温度は130℃程度とすることが大切です。スチームアイロンの場合、水の汚染などのために、シミになる場合がありますので、アイロンの水の状態を良く調べることが必要です。薄地のブラウスなどの場合、アイロンの圧力を強くすると、モアレ現象(木目状の縞模様が発生すること)が発生することがあります。また、湿った状態で摩擦を与えると毛羽立ちが生じる恐れがあるので注意しましよう。

(3)アイロンはできるだけ織物の経糸、緯糸の方向に沿って掛けます。その際、経糸か緯糸の太さが違う織物では、太い糸の方向から始めると美しく仕上がります。

3 汗やシミの処置

(1)汗やシミが付いたまま放置すると黄変したり、生地が弱くなるので、着たら必ずシミ抜きやクリーニングにより、手入れを行いましょう。(特に肌に触れやすい製品)。油分の多いシミ、色の濃いシミ、香水、化粧品などのシミはクリーニング店に相談した方が良いでしょう。

(2)下着類・靴下類などを除くシルク製品はクリーニング店を利用する方がよいでしよう。家庭で洗濯できるシルク製品は、一重仕立てで、プリーツ加工などの特殊加工がなされていないネグリジェ、パジャマ、シャツ、下着類などですが、サテン系(朱子織)のものは水濡れによって品質を損なう恐れがあるので避けましよう。色落ちの心配のあるものについては、手洗いは避けるのがよいでしょう。

4 クリーニング店に出す際の注意

(1)クリーニング店には素材がシルクであることやシルクが含まれてる割合などを伝えることが大切です。汗、シミ、水濡れ等は応急措置を施して早めに(できるだけその日のうちに)クリーニングに出すようにします。シミ等の個所にかがり糸などで目印を付け、シミの種類や付着の時期などをクリーニング店に伝えます。

(2)破れなどのある場合はできるだけ修理して出しましょう。特にニット類は注意する必要があります。

(3)上下揃いの物は必ず一緒にクリーニングに出すようにしましよう。クリーニング店には、一品洗いなどの特別メニューがあるので相談すると良いでしょう。

(4)クリーニング店から返ってきてから、ビニール袋から出しましょう。ビニール袋に入れて届けられたものをそのまま洋服ダンスなどに保管しがちです。これは、ちりよけにもなるので、一見良さそうに見えますが、ビニール袋で密封すると空気の流通が悪くなるため、ムレあるいはカビを生じたり、残存溶剤の気化ガスのために生地を傷めたりする恐れがあります。また、クリーニング店から返ってきたハンガーは針金であるために、形〈ずれの原因ともなります。したがって、必ずビニール袋から取り出して、適切なハンガーに掛け替えて、空気がよく通るような状態にして、洋服ダンス等に収納保管しましょう。

5 防虫剤は必ず1種類、絶やさないように気をつけましょう。2種類以上の防虫剤を用いると、片方が液化して衣類のシミの原因となるので、1種類の防虫剤を使用するようにしましよう。

6 家庭での洗濯

(1)洗剤はモノゲン等の中性洗剤を使用し、30℃程度のぬるま湯で手洗いします。洗い方は、押し洗いや振り洗い、つかみ洗いとし、もみ洗いは避けましょう。汚れのひどい箇所は軽く叩くようにして洗います。できるだけ洗濯機を利用しない方が良いが、使用する場合は、布袋(ネット)に入れ洗濯時間を短くします。良くすすいだ後、絞らずにそのまま陰干しにするか、またはバスタオルなどで水気を取ってから陰干しにします。この場合、ハンガーに掛けて形を整えてから陰干しにするとよいでしょう。直射日光は、黄ばみや生地のぜい化の原因になります。染料の種類により色落ちするものがあるので、他のものを汚染しないように注意します。

(2) 漂白には過酸化水素、ハイドロサルファイトが適していますが、クリーニング店に任せるのが良いでしよう。塩素系漂白剤(晒し粉、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム)は生地を傷めるので絶対に使わないように注意しましう。


イ ベ ン ト 情 報

第16回特別展 群馬と伊勢型紙展

明治以降、高崎を中心に手捺染が盛んとなり、
型紙を使った小紋柄から華麗な友禅柄まで幅広い製品が
作られてきました。

今回は、群馬で使われた伊勢型紙を中心とした各時代の型紙、
型紙作りや型染めの工程、型染めの布などを紹介します。

主 催 : 群馬県立日本絹の里

協 力 : 繊維工業試験場、高崎捺染協同組合

会 期 : 平成12年9月13日(水)〜10月2日(月)

9:30〜17:00(入館は16:30まで)

主な出品物 : 型紙の歴史

型紙と型染めの製作工程

江戸〜平成の型紙

場 所 : 群馬県立日本絹の里

〒370‐3511

群馬町大字金古888−1

電話:027‐360‐6300

観覧料(常設展観覧料を含む) : 一般200円

大高生100円

65歳以上、中学生以下は無料

編集協力: 農林水産省畑作振興課、農畜産業振興事業団