第81号(平成12年10月1日)

発行: 社団法人日本絹業協会・ジャパンシルクセンター

 

最新中国蚕糸事情 (その2)

農畜産業振興事業団 副理事長 窪田 武

 

3 中国の新しいシルク産業

 中国の繭・生糸生産量が世界の総生産量の60〜70%を占めるに至った状況下において、東南アジアをはじめとする世界の経済不況などによりシルクの需要が減退し、繭・生糸価格が低迷せざるをえない事態となった90年代半ばに、中国はシルク産業政策について新しい試みを始めました。

 即ちに先ず、96年に従来は、養蚕は農業部、製糸・織物は国家紡織工業局、輸出は対外貿易部にと分散していた行政組織を一本化し、国務院(国家経済貿易委員会)に、シルク産業に関係するこれらの省庁間の政策調整を行うための組織として、「国家シルク協調弁公室」を新設しました。弁公室では、従来のシルク産業政策を種々の角度から見直すとともに、日本をはじめ除外国の制度を勉強していましたが、3年目の98年に入り、本格的な繭・生糸の需給調整政策として、製糸等の生産能力の圧縮や国家備蓄制度を打ち出し、2000年には生糸輸出管理体制の改善やシルク産地の西方へのシフトなどの施策を次々に明らかにしてきております。これらの新政策の実施状況は、次のとおりです。

(1)生糸生産能力の圧縮

 当初の計画では、急激に増大した製糸生産能力を、減退した海外需要に見合う適正な能力にするため、98年から2000年までの3年間に約三分の一を圧縮しようというものでありました。そのため、生産設備を許可制とし、生産能力の総量規制を実施するとともに、生産能力の低い設備、機械を優先的に廃棄させることにより全体として、コストダウンや品質向上をも図ろうとするものでありました。

 今回の調査によれば、製糸能力は約36%、絹紡能力は約28%とおおむね三分の一圧縮の成果をあげているとのことでありましたが、各省でのヒアリングでは、省により圧縮目標は異なりますが、数量的な圧縮そのものは繭の減産より比較的容易に達成したので、むしろ優秀な企業、設備を残すことにより品質の向上を図り、競争力を強化することに重点が移っているようでした。

中国の養蚕農家(上)、この二階が蚕室(下)

(2)生糸の国家備蓄制度

 中国が生糸の国家備蓄を行うという話を聞いて、すでに国家的備蓄を実施した経験をもつ当事業団としては、極めて強い関心を持ちました。確かに、98年秋には、弁公室が生糸を買い上げて、浙江省のある工場に保管しているとのことでありました。買上げ数量、価格、保管状況などは公表されませんでした。中国側の話では、国家備蓄を試行的に実施したところ、需給状況も大幅に改善し、価格も回復したので、備蓄の成果は達成されたとして、その後は買い上げは実施していないとのことでありました。また、今回の調査でも四川省の製糸工場で、98年と99年の2回にわたり少量ではあるが杭州のシルク公司に備蓄用生糸を売却したとの情報が確認されました。いずれにしても繭減産により、生糸の需給バランスが一段と引き締まってきた現状では、生糸の国家備蓄を引き続き実施する必要性は、なくなっているものと思われます。

(3)輸出管理体制の改善

 さて、この2000年から実施された生糸の輸出管理体制の改善についてであります。従来は、輸出相手国との間の輸出契約は、中国シルク進出口総公司が一元的に契約することにより、生糸の輸出を管理していましたが、2000年からは、個々の輸出企業(39社)が、それぞれ個別に輸出契約を締結できることになりました。シルク総公司は1企業として(子会社を通して)輸出に参加することとなり、代わりに、中国紡織品進出口商会が39社との横の連絡をとり、輸出価格等についての指導、管理を行うことになりました。この改善措置は、来るべき市場開放に備えて、自らも輸出企業であるシルク総公司が一元的に輸出管理することは、自由競争を阻害するおそれがあるからというものでした。

 我々が訪中したのは、この改善が実施されて間もない5月でしたが、すでに中国紡織品進出口商会にはシルク部が新設され、北京では、シルク部の新しい担当者の手配でスムーズに行動することができました。同商会は元々繊維産業全体をカバーする非営利の組織で、かなり公的な色彩の強い連合体のようです。ただし、地方の各省には出先機関はなく、地方での我々の案内は従来どおり、各省のシルク進出口公司が同商会との連絡をとりつつ、的確に対応してくれました。

(4)繭生産地域の西方へのシフトについて

 これは、一般論として、揚子江下流を中心とした東部の主要養蚕地域においては、目覚ましい経済発展により、繭の生産が減少してきたので、その代替地としてより西部の地域へ産地をシフトしようとするものであり、中国政府が国内経済開発の最重要プロジェクトとしている「西部大開発」と呼応するものであります。今回はその対象となっている四川省、陝西省の現地で話を聞いてみましたが、この問題についての現地の関心は低く、具体的メリットが明らかになっていないようでした。四川省、陝西省の養蚕産地では、古くからの零細な家族経営が定着しているので、この施策により、生産量が爆発的に拡大することは期待できないとの印象を受けました。

おわりに

 世界最大のシルク大国におけるシルク産業政策の改革は、ようやく具体的な施策が着々と実施されはじめたところです。我々は、この試みに引き続き多大な関心をもって注視するとともに、我が国としても協力できる分野での積極的な協力が期待されていると思います。


新製品紹介

赤ちゃんの肌に優しい純国産絹(生糸)を使用した新生児用肌着を販売開始

 碓氷製糸農業共同組合と百貨店の高島屋が高品質の純国産絹(生糸)を使用した新生児用肌着などを共同開発し販売を開始しました。

 絹は、人間の肌に最も近い動物性タンパク質からできていて、優れた保温性、吸湿性、放湿性、肌触りを備えていることから、赤ちゃんの敏感な肌に最適といわれています。

新しい繭「新小石丸」

 この製品の最大の特徴は、「新小石丸」という繭を使用していることにあります。

<新小石丸>

 絹には様々な種類がありますが中でも、高品質繭「新小石丸」は、日本古来の蚕の原種で、最も細くしなやかで光沢、肌触りが良いとされる「小石丸」を現在の蚕糸技術に合わせて改良した高品質の蚕の繭です。この繭は普通の繭よりも軽く、生糸の生産量の割合は少な目ですが、節が少なく、太さのムラのない生糸が生産されます。普通、繭から取れる糸(生糸)の始めの方の部分と終わりの方の部分は繊維の質が一定でなくムラがあるため、本製品では繭の中心部の節がなく繊度のムラのない一番安定している部分(取れる繭糸の3分の1)の生糸を使用しているために一層の肌触りの良さと美しい光沢を備えています。

 また、丈夫で摩擦に強く、肌着類はネットを使用すれば洗濯機で簡単に洗濯ができるとしています。加えて、かつて(昭和50年頃まで)絹のベビー用品は有害物質(ホルマリン)が製造過程で使用されていましたが、本製品は製造の工程でいっさいホルマリンを使用していません。このことからも赤ちゃんの敏感な肌に優しい製品となっています。

 さらに製品へのこだわりとして、縫い糸や刺繍糸まで生地と同じ「新小石丸」を使用していて品質の良さを十分に生かされています。

多様な製品

 製品の種類は生産準備品から新生児の肌着、寝具関係、お宮参り用品など至れり尽くせりの準備がなされていて20アイテムがあります。価格も綿製品の約1.5倍〜2倍と求めやすい価格帯に設定されている事も特徴の一つです。 

シルクサテン お宮参りドレス

 各製品の種類は、出産準備用品(サテン無地・ふくれ織り・サテン飛び柄刺繍)・アフガン、ツーウエイドレスなど8種、新生児肌着関係用品・三分袖肌着、コンビ長下着、長下着など6種、寝具関係用品・掛けカバーリング、敷布団、肌カバーリング、シ−ツ他2種があります。なお、製品の一部は当ジャパンシルクセンターに於いても展示販売されております。是非、ご来場の上ご見聞下さい。

 

イベント情報

ジャパンシルクセンター「2000年秋の秋桜セール」

軽くて暖かいシルク! 秋・冬のシーズンには最適!!


インナー、Tシャツ、ブラウス、セーター、パジャマなどの

衣料品から化粧品までのシルク製品をお求め易い価格で、ご提供いたします。

同時開催:婦人服パターンオーダー 

シルクの高級服地を使用。採寸してお作りいたします。値段もお手頃です。

期 日

10月30日(月)〜11月2日(木) 

営業時間午前10時〜午後6時まで

(ただし、11月2日は午後5時まで) 

場 所

ジャパンシルクセンター

千代田区有楽町1−9−4 蚕糸会館

03−3215−1212

最寄り駅 JR有楽町駅

     地下鉄各線日比谷駅・有楽町駅

共 催

株式会社つむぎやトリオインターナショナル

魅惑の繊維-絹物語り- 2000年シルクフェア


日 程

11月8日(水)〜11月14日(火)

主 催

大丸百貨店東京店

共 催

社団法人日本絹業協会

後 援

農畜産業振興事業団

会 場

大丸百貨店東京店8階催事場 

JR山手線地下鉄「東京」駅下車 

入場無料

主な催事

糸繰り織り染めの実演及び体験コーナーの設置

絹に関するパネルの展示

シルク製品をわかりやすく分類し、展示・販売

第39回農林水産祭『実りのフェスティバル』


日 時

11月10日(金)〜12日(日)

午前10時〜午後5時まで

(但し12日は午後3時まで)

場 所

東京ビッグサイト西展示棟4階 

入場料

無料

交 通

・新橋−−国際展示場正門前(ゆりかもめ)

・新木場駅(JR・地下鉄乗換)−−国際展示場駅 

 下車徒歩 5分(臨海副都心線)  

・東京八重洲口浜松町駅−−東京ビックサイト(都営バス)

主 催

農林水産省(財)農林漁業振興会

会場には日本絹業協会・ジャパンシルクセンターの特設展示販売場コーナーが

設けられています。

’00京都・西陣織展 −伝統の美− 東京展


伝統を誇る西陣織の生産工程の実演を中心に染織文化と

作品の数々を紹介・販売をします。

日 時

10月31日(火)〜11月5日(日)

会 場

三越 日本橋本店

主 催

西陣織工業組合

共 催

京都府・京都市

後 援

(社)日本絹人繊織物工業会

(社)日本絹業会

(財)伝統的工芸品産業振興協会西陣伝統産業協会

編集協力:農林水産省畑作振興課、農畜産業振興事業団