第82号(平成12年11月1日)

発行: 社団法人日本絹業協会・ジャパンシルクセンター

 

注目されるシルク、課題は訴求方法

市場は追い風、天然素材が台頭

日本繊維新聞社 市川重人

アイテム同質化が著しい日本ファッション

 最近、日本のファッションを取り巻く環境は、悪化していると言われています。これはアイテムの同質化による“顔のない”ブランドの供給過多が原因と思われます。例えばャツやカットソーですが、ブランドロゴがなければどこのブランドか、見分けがつきせん。百貨店インショプでは箱型ショップに分かれ、ブランドごとの展開が主流になっています。しかし、アイテムで見ると、見分けがつかず、いいかげん消費者に飽きられてしまった帰来があります。     

 一番ひどかったのは、昨年の冬。ある百貨店の一階で展開されている五つのブランドで、まるで同じアイテムを生産していることがありました。この時期、ヤングを中心にバンダナ柄スカートが流行したのですが、同じ柄に同じ素材、丈まで一緒なスカートが展開され、驚いたのを記憶しています。内訳は、大手アパレルが提案する三ブランドと、中堅メーカーが展開する二ブランドだったのですが、今現在でも同質化から抜けきれない状況が続いています。残念ながらその五ブランドの売り上げは低下し、ヤング市場を牽引した面影はありません。売れ筋を追いかけるあまり、自己のクリエーションを忘れてしまったようです。

天然素材が台頭する中、真骨頂を見せた「イッセイ・ミヤケ」の
クリエーション(2001春夏東京コレクションから)

同質化には素材で差別化する

 このような同質化に対する状況下で、素材面から差別化を図るブランドが出始めています。それも天然素材という付加価値をつける形で。核となるのはシルクやコットン、リネンなどで、非常に肌触りの良いタイプが受け入れられています。特にシルクはその高級感に加え、ディーリーなカジュアル着にも使われるようになっているようです。もっとも消費者にアピールするためには、日本で生産したシルクをどれだけ認知させ、市場に反映させるかでしょう。「価格が高い」「自宅で洗濯ができない」などマイナス要因を打破することも必要です。繊維関係者の間では、国内生産シルクの品質が飛躍的に向上したのを知っていますが、一般消費者までは認知されていません。

 また、価格の安い輸入物シルクに対抗するため、価格競争をするようでは厳しい状況が続くと思われます。日本のデザイナーレベルでは、価格の安いシルクを求めていません。むしろ、付加価値の高い、日本でしか生産できないシルクを喜んで採用します。以上のことからもシルクにとって無限の“チャンス”が広がっています。市場ではエコロジーな展開が注目されていることもあり、天然素材、とりわけシルクの訴求が重要になっています。


「イツセイ・ミヤケ」

ー2001春夏東京コレクションからー

見直されるシルク

 シルクの流通経路を考えた時、複雑な経路をたどり価格が高くなることが、度々議論されています。日本のシルクにとって、これだけ追い風が吹いているのに、手をこまねいていては拡大は望めません。日本のシルク素材は評価が高く、海外の著名デザイナーの間でも注目を集めています。もっと訴求すれば世界を相手に拡大できるでしょう。

例として、パリコレクションで高い評価を得ているブランド「コム・デ・ギャソン」(川久保玲)、「ヨウジ・ヤマモト」(山本耀司)、「イツセイ・ミヤケ」(滝沢直己)も殆ど国内素材でコレクションを創作しています。天然素材、合繊に限らず国内で素材を調達するのが鉄則です。彼らのコレクションの後、他の海外デザイナーが同様の素材を調達し、国内の素材メーカーが潤う仕組みに“いつの間にか”なっている。それだけ影響力のあるデザイナーが日本に存在するのです。彼らのクリエーションに技術的に素材提供を行い、日本のシルクを提案することも必要と感じています。消費者やデザイナーなど広い視野を持って、シルクをアピールすることが命題になっているのです。


旭川・日本のまつりで繰糸の実演

前駒沢女子短期大学 前講師 水出通男

 去る8月10〜13日北海道旭川市で開催された「日本のまつり…第8回地域伝統芸能全国フェスティバル・北海道…」で、ジャパンシルクセンターはわが国の蚕糸・絹業の宣伝を兼ねて繰糸の実演を行い、繭や繭糸・生糸を初めて見た参加者たちに多大の感銘を与えることができました。

わが国には「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(いわゆる伝産法)」があり、そこではわが国の伝統的な工芸品のうち、100年以上の歴史を持つ優れた製品を「伝統工芸品」に指定するとともに、その卓越した技能者を伝統工芸士に認定して伝統産業の様々な振興策を講じております。北海道でも木工品・陶磁器・ガラス製品を始め、繊維製品では優佳良織など優れた工芸品はありますが、いずれも歴史が浅く、伝産法の基準に合致するものはありません。そのため(財)伝統的工芸品産業振興協会が毎年11月に全国の主要都市に場所を変えて開催している「伝統的工芸品産業ふれあい広場」が北海道で開かれたことはなく、道民が伝統工芸士の技に触れる機会はありませんでした。北海道としても地場産業の振興に向けて伝統産業の育成は悲願であり、「日本のまつり」の一環として、「伝統的工芸品産業ふれあい広場」に準じた形で「全国伝統的芸品 匠の技フェスタ in旭川」を開催したわけです。               

 この「フェスタ」には全国各地から参加した染織物を始め、木工・竹工、陶磁器、漆器、和紙・文具その他、53に及ぶ伝統的的工芸品の展示のほか、実演,体験コ−ナ−も設けられ、見学者たちは伝統工芸士たちの技を目のあたりにこし、現物にも触れて伝統的工芸品の素晴しさに感嘆の声を挙げておりました。なかでも36産地が指定を受けている絹織物はわが国の伝統工芸の代表的もので、会場入り口の最初の場所に結城紬や西陣織・京友禅など11の染織品が出展され、一様に工芸士たちの技の巧みさと製品の精緻さ、美しさを改めて認識しておりましたが、それらの原糸である生糸・絹糸の生い立ちを知るものが少なくなってきているの事実です。そのため、主催者側からの強い要請によりジャパンシルクセンターは特別参加の形でこの「匠の技フェスタ」に出展し、「繭から生糸まで」のブースで、繭・生糸・絹製品などの実物とパネル・パンフレット等を用いて、見学者にわが国蚕糸・絹業の現状と絹の性能などについて展示・説明を行うとともに、簡易繰糸機を用いて繰糸の実演を行いました。

 北海道では戦中戦後の一時期養蚕が行われたことがあるようです。そのため、養蚕の経験を持つ極く一部の老年層は繭を見て懐かしんでおりましたが、殆どの見学者はカイコや繭・生糸の名すら知らず、煮繭ら繭糸が次々と繰り出されて生糸となるさまを目のあたりにして感嘆し、繰糸機の前から離れようとしなかったため、ブース前は大変に混雑しました。そのため4日間の会期中に訪れた8万人の見学者のうち、多くの方々が素通りし良く見て頂けなかったことが唯一残念なことでした。

 見学者にとって最大の関心事は繭の糸口の求め方と繰られる繭糸の長さで、適煮繭からは簡単に糸口が求められ糸長が千数百米に及ぶことを知り、繭糸とそれを作ったカイコの神秘さに驚嘆しておりました。また、婦人層では、絹は高価で、弱く、扱い難いものとの認識を持つのが普通ですが、最近の絹製品の性能と価格を説明することにより、多少なりと絹を身近かに感じて貰えたと思っております。

 また、絹織物に比較的関心の薄い青壮年の男性には非衣料分野における絹蛋白質の様々な利用技術の現状ついても紹介し、蚕糸・絹業が自然に優しい循環型社会の一端を担うものであることを理解して頂けたものと思っております。

水出氏の説明を熱心に聞かれる高円宮ご夫妻

 なお、今年の「伝統的工芸品産業ふれあい広場」は11月2〜5日に盛岡市近郊の岩手県産業文化センターで開催されました。ジャパンシルクセンターは例年どおり特別展示として参加しました。全国各地の伝統工芸士たちの作品やそれらの生産工程の実演を見たり試したりすることができ好評を得ました。本展示会については、後日報告をいたしたいと思います。

イ ベ ン ト 情 報

-第66回グランマルシェ開催-

スカーフからインナー、ブラウス、スーツなど様々な
シルク製品をお手頃な価格で品揃え、
ご来店をお待ちしています。

日 時


12月4日(月)〜7日(木)

午前11時〜午後6時30分まで

会 場


丸の内中通り

ジャパンシルクセンター

東京都千代田区有楽町1-9-4 

蚕糸会館 

03-3215-1212

最寄り駅


JR・有楽町駅

地下鉄各線:日比谷駅・有楽町駅

-「シルクフェア2000」-

新たに研究開発されたりブランド化された「絹」の素晴らしさを
生かしたシルク製品を展示紹介いたします。

会 期


11月21日(火)〜12月17日(日)

会 場


シルク博物館

横浜市中区山下町1番地

045-641-0841

主 催


シルク博物館

社団法人日本絹業協会

同時開催

-第44回横浜スカーフデザインコンテスト入賞作品展-

世界中から募集したスカーフのデザインコンテストの
入賞作品を展示。

会 期


11月25日(火)〜12月17日(日)

会 場


シルク博物館  

主 催


(社)横浜ファション協会

-横浜スカーフの歴史展-

世界的にスカーフの産地として有名な「横浜」の始まりから
現代までの移り変わりと製品の数々を展示。
横浜に残る最も古いスカーフのコレクションも展示される。

会 期


11月21日(火)〜12月17日(日)

会 場


シルク博物館

シルク博物館への交通

最寄駅


JR・地下鉄「関内」駅下車

徒歩10分

入場料


一般     500円   

高・大学生  200円

65歳以上  300円

小・中学生  100円

編集協力:農林水産省畑作振興課、農畜産業振興事業団