第92号(平成13年9月1日)

東京コレクションではシルクの重要性増す

「フェミニン」のキーワードにシルク素材を─。

2001年秋冬ファッション動向

「ナイーマ」2001年秋冬コレクション

「キョウイチ.フジタ」2001年秋冬コレクション

「アンダーカバー」2001年秋冬コレクション

 この秋冬シーズンのファッショントレンドは「マスキュリン&フェミニン」というものが浮上し、男性的なテーラードジャケットに女性らしいフレアなスカートを組み合わせるなど、対照的なアイテムを1ルックスで表現することが主流です。昨年に続き、レザーやリアルファ−(毛皮)を使ったアウターウエアも数多く発表されています。実はこのトレンドに、シルク素材は大きく関わっているのです─。

 まずフェミニンなモチーフを表現する時は、流れるようなドレーブ感や柔らかいフォルムが必要になってきます。ある日本人デザイナーは「さまざまな素材を使ってブラウスやスカートを作り込んだが、トレンドを表現するにはシルクが最適」と話しています。シルク100%の素材に加え、シルクシフォンやシルクコットンなどの混紡も以前に比べ増加しているようです。

 2001年秋冬東京コレクションを観ると、同様のトレンドを巧みに表現しているのが柳田剛(ナイーマ)です。禁欲的、構築的ともいえるジャケットにマイクロミニのスカートを合わせるスタイリングは、男性的な力強さと女性らしい優しさが同居します。全体のバランスも良く、ヤング層を意識したストリートファッションが主力の東京コレクションにあって、ナイーマは大人のスタイルを展開しています。素材をみても、同じ黒でも光沢のあるシルク混のアイテムと深みのある黒との融合を図り、シルクを効果的に見せています。このようにシルクを効果的に見せるコレクションは前回よりも増加傾向にあります。

 素材を駆使するという点では、藤田恭一(キョウイチ.フジタ)のコレクションも注目に値します。クロコダイルに見える素材も、実は和紙だったりするなど、コレクション後の展示会で驚かされることもいまいまあります。今回のショーで印象に残っているのが、光沢のあるヒザ丈のプリーツスカートです。ルックスに動きを与え、シルクの光沢が見事にジャケットとマッチしていました。ちなみにジャケットは黒からライトグレーのグラデーションでまとめた重い質感のジャケットでした。プリーツ仕様で軽くみせるスカートとの対比もうまくまとまっています。

 最後に紹介するのが、現在の東コレで一番の輝き放っている高橋盾(アンダーカバー)です。彼は独自の視点から今の「東京」を表現するすることに最も長けたデザイナーと言えるでしょう。

ショーでは、ゲリラを想起させるスタイリングにスワロフスキーのクリスタルやイミテーンョンの宝石(プラスチック)を取り付けたものでした。ジャケットやスカートなどの単品コーディネートで「マスキュリン&フェミニン」のトレンドを表現するデザイナーが多い中、強さの象徴をゲリラに求め、また女性らしさを宝飾品で置き換えたショーは圧巻です。

 もし高橋盾が国内産の希少価値の高いシルクを使ったら─などと、想像してしまうのは私だけではないはずです。既にデザイナー達に生地を供給している話も良く聞くのですが、まだまだ浸透していないのが現状。紹介した3人だけではなく、コレクションに対して積極的な支援を行うことも“シルク浮上”のためには必要と考えています。


「Think Silkの会」が船出─

着る人々が思うコクーンの世界 

       特定非営利法人シンクシルクの会   事務局長  小川 泰子

 いよいよWTO(世界貿易機関)が地球レベルを覆って動き出します。

 21世紀は先進七カ国に巨大ロシア、中国、インドを加えた地球はひとつの世紀が始まるのです。

 それぞれの国々の一人一人が何を着るのかが問われ始めるのです。

 当然、作って売る人々にも同じ問いかけが始まっています。

 日本では明治維新が始まったとき、江戸時代の中期から盛んになった木綿が近代化の流れの中で泣く泣く生産放棄の歴史をたどりました。木綿が豊かな水産資源を肥料にして日本各地で個性的に作られ使われてきた歴史は幕を閉じたのです。原綿を輸入して紡績に特化し産業化した百年間、衣生活の土台の繊維産業が日本という国家のいしづえを作り上げてきたのです。そして同時に、この百年は武士や金持ちの衣生活を支えてきた絹が近代国家形成の基幹材に位置付けられてきました。加えて新しく学習を始めた羊毛(軍隊服)を暮らしの中に取り入れてきたのです。

 衣生活産業を構成する基本は原材料です。紡績・テキスタイルが最初です。

 日本では繊維(絹と木綿)が国家基幹産業だった明治・大正時代に暮らしている国民は産業化する動きと無縁で「細幅」の和装の世界で生きてきました。作る人々も輸出産品を生産する人と衣生活供給をするのは別々の世界を形成することになりました。

 百余年前の絹の生産にしても輸出用と内需用と分けては考えてはいませんでした。ただ当たり前のように輸出が第一でその余りや傷物が作る人が拡大する中で、国内の女性たちの暮らしも結果的に豊かに広げてきたのです。

 近代化が始まった明治時代、それまでの日々の暮らしを支えてきた木綿は機械化した編物が近代化と同時にはいってきていっぺんに変貌してしまいました。木綿畑は桑畑に押され原材料の木綿を輸入し紡績・加工されて輸出されていきました。この時代の着る人々の思いは著作物になって残され、幸田文のような名文を残しています。

 そして1945年、和装が毎日の暮らしから本格的に消える時代が始まりました。

 日々の暮らしで洋装が本質的に始まったのです。

 軍服で洋服になじんでいた男性と違い、敗戦で和装から開放された女性たちは自分たちで洋服を裁断し縫う技術の獲得に邁進しました。日本列島どこもかしこにも洋裁学校が雨後の竹の子のように作られました。

 敗戦後の政府は、桑を植樹し蚕を飼ってシルクの輸出に再び期待をかけました。

 しかし結果は、内需で「絵羽織」のブームが入学式の礼服に使われることになりました。

 輸出産品の絹は回復しなかったのです。

 日々の暮らしは洋服で、潤沢に使える絹は礼服の必需品という二重生活がしばらく続きました。

 敗戦まもなくの1952年、全国統一紳士婦人洋服標準寸法が制定され「つるし服」が販売されるようになってきました。

 1970年公認洋裁学校が全国で3800校、学生数は百万余人。小学校の廃校が1968年で1161校で過疎化が顕著に。国際羊毛事務局の調査によれば「つるしの婦人服が既製服と呼び方が変化し店頭では「プレタ・ポルテ」に、既製服化率は90%を越えたのです。同じ時期アメリカでは「ファッション・ビジネス」という言葉が産業として確立。日本では何でもファッション(流行)のブームが始まりました。

 一方、蚕をみると昭和12年(1937年)蚕品種指定制度で輸出産品生産を主眼にした農林大臣指定の交配形式以外の蚕品種は製造配布ができなくなりました。人々が求める衣生活と無関係に蚕は動いてきているのです。国家的には敗戦と同時に遅れた化学を取り戻すために膨大な資金が投じられナイロンに代表される合成繊維が高い犠牲を払って世界規模で生産開発できています。

 1998年3月蚕糸業法がいよいよ廃案になりました。

 この間1986年に日本野蚕研究会が発足し、1990年には国際野蚕学会が結成され1994年には日本でも家蚕糸研究者たちも参加した日本野蚕学会ができています。 一方で激変した衣生活そのものの研究は、ほとんど系統的には展開されているとはいえないのではないでしょうか。1872年太政官布告(官員の礼服の洋服採用・古式服装の廃止)で洋服化が決められて、第二次世界大戦の敗戦ショックが女性の衣生活を洋装化することを決定付けました。それからの50年で衣生活の産業化が追いついてきたのです。

 一般庶民が産業化の流れの中で着たいものを着たいように着る時代の始まりは21世紀になってようやく迎えたということができるでしょう。

 こう考えてくると、絹というカミサマの贈り物は呉服という世界では完成していても洋服という世界では輸出品の研究でしかなかったのです。伸縮性のなさ、しわになり易い、摩擦に弱い、洗濯が難しい、機能性が低いとある研究者は分析されています。

 蚕(家蚕・野蚕)という昆虫が生産してくれる糸がもつ発色性、軽さ、肌触り、抗菌性、保温・保温性などは大変優れています。洋服が絶対視する造形性にも使えるのはふるくからの世界的な輸出産品だった過去が証明しています。

 Think Silkの会会長の岡正子が取り組んだのは指摘された伸縮性のなさとしわになり易いの2点を解決するテキスタイルの開発からでした。

 国家にがんじがらめにされてきたお蚕さんを着る私たちの目で見直していきたいという思いです。

 お蚕さんはアジアにカミサマが下されました。アジアの女性たちの力で、研究資源を使う人々の目で産業へ提案していければという思いで特定非営利法人という組織で活動していき木綿の二の舞にはしたくない思いで今年2001年の3月に会を立ち上げました。

イベント情報


JA全農「秋のシルクコレクション」

・日時:10月9日(火)〜11日(木) 午前10時〜午後6時

・場所:ジャパンシルクセンター

・主催:全国農業協同組合連合会(JA全農)

・JA全農養蚕対策室では、日頃のご愛顧におこたえしてオリジナルブランドシルク商品を特別価格でご提供するほか、秋冬物の魅力あるシルク商品を取りそろえて、ご奉仕いたします。


第40回農林水産祭『実りのフェスティバル』

日 時:11月9日(金)〜11日(日)午前10時〜午後5時まで
   (但し11日は午後3時まで)

場 所:東京ビッグサイト西展示棟4階  入場料:無料

交 通:新橋→→国際展示場正門前(ゆりかもめ)  
    新木場駅(JR・地下鉄乗換)→国際展示場駅 下

車徒歩 5分(臨海副都心線)  
東京八重洲口・浜松町駅→→東京ビックサイト(都営バス)

主 催:農林水産省・(財)農林漁業振興会

★会場には日本絹業協会・ジャパンシルクセンターの特設展示販売場コーナーが設けられています。


日本絹の里 第7回企画展

明治初期の日伊蚕糸交流とイタリアの衣裳展

19世紀のイタリアの絹衣裳など多彩な展示が行われます。

日 時:9月14日(金)〜10月29日(日)

場 所:日本絹の里 群馬県群馬郡群馬町金古888-1

お問い合せ先:027-360-6300

主 催:日本絹の里

後 援:外務省、イタリア大使館他


ブータンの民族衣装展とシルクフェア

-アジアと日本のシルク交流-

ブータンの染織作品と工芸品などの展示と着て食べて健康で美しくなるシルク製品展示と販売を行います。

日 時:10月6日(土)〜11月4日(日)

場 所:シルク博物館 横浜市中区山下町1番地
    お問い合せ先:045-641-0841

主 催:シルク博物館(シルクフェア主催:シルク博物館、
    日本絹業協会)

後 援:農林水産省、外務省、ブータン王国名誉総領事館、
    農畜産業振興事業団他


編集協力:農林水産省特産振興課、農畜産業振興事業団