第96号(平成14年1月1日)

伝統文化としての絹文化の発展を

社団法人 日本絹業協会会長 吉國 隆

 新年明けましておめでとうございます。

 21世紀幕開けの昨年は、内外に大変な問題が続発し、期待を裏切られることの多い1年でした。このような不安定な時代になって、人は、自分の身の回りの文化や生活のあり方をあらためて見つめなおしてみるようになるのかもしれません。

 昨年は結婚がふえたそうで、雅子様のご出産が影響したとも考えられますが、時代の流れを映している面もあると期待したいものです。敬宮愛子内親王の産着が皇后陛下お手作りの繭から作られたことでもあり、伝統文化としての絹文化について、このような時代の風潮が追い風になってくれればと願わずにはおられません。

 昨年暮れの国の予算案においては、農林水産省のご努力により、伝統文化としての養蚕地域の灯を守り育ててゆくための新しい予算が実現し、繭の価格対策とあいまって、蚕糸業の再生が期待されつ年となりました。

 同じ伝統文化につながる蚕糸産業が、川上川下の連携の強化によって、厳しさを増す国際コスト競争に立ち向かいながら、本物の製品の生産流通を守ってゆく努力がますます重要になっていると思われます。

 (社)日本絹業協会では、農林水産省及び経済産業省のご指導のもとに、昨年秋、国際シルク消費促進協議会を発足させていただきました。さしあたって、国産絹製品に対する表示の問題について、関係業界の皆様を含めた討議を行って頂いております。近く結論を得て、消費者に必要な情報を提供しつつ、国産の伝統製品により強い関心を持ってもらえるような仕組みをスタートさせたいと願っています。

 12月にISA(国際絹業協会)主催の国際絹業大会がインドで開かれました。日本の絹をめぐる最近の状況を紹介し、その中で、ハイブリッド・シルク、無撚シルク、扁平光沢糸など新しい絹素材お開発状況にも触れましたが、フランスの織物業者などから思った以上に強い関心が示されました。

 愛子様の産着の話を紹介した時には、満場が拍手で応えてくれました。欧米で、絹製品の需要がやっよ低迷から脱しかけたところにテロが発生し、再び頭を抑えられた感じになっていたところなので、ひときわ明るい話題として歓迎されたようです。世界的な需要分析の視点から、欧米の絹製品重要が中国の生糸価格、そしてまた、日本の生糸価格を左右しているとの分析も紹介されました。国際貿易に供される生糸の品質問題についてホットな論争があったのも、今次大会の特徴のひとつでした。

 今回は、テロの影響もあり、日本からの参加は9名とやや寂しいものでしたが、国際的な動きをにらみながら蚕糸絹業の戦略を考える上で、次回(2003年7月)のコモ(イタリア)での大会には、川上、川下から多数の参加が得られるよう望んでおります。

 今年が絹の関係者や愛好者にとって実り多い年になることを祈ります。


伝統的工芸品と伝統工芸ふれ合い広場、島根で開催!

水出 通男

 去る11月15〜18日に“001伝統工芸ふれ合い広場・島根”が島根県松江市の“くにびきメッセ松江”で開催されました。これは(財)伝統的工芸品産業振興協会(以下伝産協会と略します)がわが国の伝統工芸の振興を図るため、11月を伝統的工芸品月間と定めて毎年1回この時期に全国伝統工芸士大会と併せて開催してきているもので、当協会(ジャパンシルクセンター)は毎回協賛団体としてこの催しに参加し、わが国蚕糸・絹業の紹介と国産絹製品の宣伝に努めて参りました。

・伝統的工芸品とは

 ここで伝統的工芸品について説明しますと、伝統的工芸品とは「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49年5月25日公布、平成4年5月6日改正 以下伝産法と略します)」に基づき、次に述べるような厳しい要件を満たした製品について通商産業大臣(現・経済産業大臣)が指定したものに限られている名称です。

 指定の要件とは、製造に当たって熟練した技を必要とし製品が芸術的要素を備えたもののうち、(1)主として日常生活に供されるもの(2)伝統的に使用されてきた原材料を用いたもの(3)伝統的技術または技法により製造したもの(4)製造工程の主要部分が手工業的であること(5)一定の地域で産地が形成されていることなどですが、他に「伝統」という言葉に相応しい歴史を持つことも求められ、その目安としてほぼ100年以上にわたる実績が必要とされているようです。

 現在、国から指定を受けている伝統的工芸品は織物、染色品、組紐・刺繍、陶磁器、漆器、木工品・竹工貧、金工品、仏壇・仏具、和紙、文具、諸工芸品など11分野の189品目に、伝統的工芸材料・用具の3品目を加えた192品目に及んでおり、それらの製造を担う卓越した技能者には伝統工芸士の称号が与えられ、製品には伝産協会が発行する伝統マークを使用した「伝統証紙」の貼付がされております。

 これらの伝統的工芸品のうち生糸・玉糸・紬糸などを原料とする織物は結城紬・西陣織・大島紬など22品目、絹織物の染色品は京友禅・東京染小紋など11品目、組紐・刺繍では京くみひも・京繍など4品目、あわせて37品目の絹製品が指定を受けており、ほかに絹糸や絹織物を部分的に用いている京仏具や諸工芸品の京人形・江戸木目込人形・京扇子、岐阜提灯などを加えるとその数は伝統的工芸品の2割以上に及び、絹製品がわが国の伝統的工芸品の最たるものということができます。

 なお、丹後・長浜などの縮緬や北陸の羽二重などは、製造工程の主要部分が機械化されており、手工業的でないという理由から伝統的工芸品に指定されておりませんが、それら製品の多くは染色加工等で伝統工芸上達の技を経て伝統的工芸品として流通していると思われます。

 伝統的工芸品はいずれもわが国の長い歴史の中で淘汰・洗練されてきたものであり、日本人の美意識や繊細な感覚を象徴する世界に誇る民族文化ということができますが、近年の経済の高度成長に伴い機能重視の大量生産製品が普及して一般の人達が伝統的工芸品に触れる機械が少なくなってきました。一方、生産面でも子弟の高学歴化が進む中で長期間の修行を要する伝統的手工芸技能の継承も難しくなってきております。

 そのため伝産法に基づく国の施策として伝統的工芸産業の振興が進められており、その事業の一環として、冒頭でも述べたように、伝産協会が“伝統工芸ふれ合い広場”を開催して、伝統的工芸品の展示と主な工芸品の製作実演を行って伝統的工芸品の宣伝を行ってきました。筆者はジャパンシルクセンターからの委託を受けて会場内に設けられた「織の広場」で「繭から生糸まで」の展示・説明を行いました。

・多くの来場者で賑わった島根会場

 昨年11月に松江市で“2001伝統工芸ふれ合い広場・島根”が開催されました。島根県は大国主命や国訓きなどの出雲神話でも知られるように歴史の古い土地柄で、陶器・金工品・石工品・木竹島・和紙などのほか、繊維製品でも出雲織り・安来織・広瀬絣など古くからの伝統工芸が盛んであったことから今回の催しの開催に至ったもので、会期中の天候は不順であったにもかかわらず4日間で5万人を越す来場者で賑わいました。

 広い会場(くにびきメッセ松江)の中央部分では全国の100品目を越す伝統的工芸品が展示されましたが、中でも絹の製品は西陣織・京友禅などのほか組紐や人形なども含めて25品目が展示され、それぞれが絢爛豪華さを競っておりました。

 また、その周囲には織や染・陶磁器など部門別に広場が設けられて、それぞれの伝統的工芸品の展示と主な工芸品の製作実演、工芸品の製作を体験できるチャレンジコーナーなどが配置されておりました。織の広場では結城紬・西陣織・本場大島紬(泥染め)・伊賀くみひも・阿波正藍しじら織・弓浜絣などの製作実演と桐生織・置賜紬など12品目の製品の展示、染の広場では京小紋・東京手描友禅・京鹿の子紋・名古屋黒紋付染・伊勢型紙などの実演と加賀友禅・京黒紋付・沖縄紅型など4品目の製品の展示がありました。

 このように「伝統工芸ふれ合い広場」では絹製品の出展が多く、来場者は一様に絹の素晴らしさに見惚れておりましたが、日頃きものやネクタイ・スカーフなどの絹製品を使っていても、その原料が何で、それがどのように作られてきたかを知る消費者は少なくなってきております。そのため、ジャパンシルクセンターは来場者に絹に対する理解を深めて頂くことを目的に、この催しに協賛団体として特別参加し、織n広場内に設けられた「繭から生糸まで」のブースでカイコ(模型)・繭・生糸・絹製品(スカーフ)などの展示と繰糸の実演を行うとともにパンフレット類を配布し、蚕糸・絹業技術の現状と絹の性能・用途についての説明などを行いました。

 島根県はかつて山陰地方における主要蚕糸県で、松江市内や近郊には片倉・郡是等の製糸工場もありました。そのため高齢者の中には養蚕・製糸の経験を持つものがあり、繰糸の実演を見て懐かしがっておられましたが、大部分の人達は繭や煮繭(にまゆ)から繭糸が秩序正しく繰り取られて生糸になるさまを初めて見て、カイコと繭糸の神秘さと機能に驚嘆し、絹製品の美しさや風合いの源について理解を深めたようでした。また、若い人達には絹たんぱく質の機能に関心を持つものも多く、絹製品が美しさだけでなく健康にも良いことを知って、新しい用途の開発に期待を寄せるなど、わが国の絹の文化とそれを支える蚕糸・絹業存続の必要性を感じて貰えたように思っております。

イ ベ ン ト 情 報

ハイブリッド絹展’02

■もっと知りたい知らせたいシルクの良さの限りなさ。

とき

2月5日(火)
14:00〜17:00

6日(水)・7日(木)
10:00〜17:00

ところ

有楽町「蚕糸会館」6階

主催

シルク開発センター

後援

農林水産省、日本絹人繊織もの工業会 他

協力

農畜産業振興事業団、蚕糸科学研究所 他

お問い合わせ

シルク開発センター TEL 03-3364-0469

絹に包まれた癒された心

■松岡グループとタクティック&カンパニーの共同企画展。
・国産生糸にこだわる天然素材・進開発繊維−スーパーフラットシルク−等を用いた新作展示会
・トータルライフ ウェアリング提案−アウターからブラウス、ワンピース

とき

2月13日(水)・14日(木)
10:00〜18:00

15日(金)
10:00〜16:00

ところ

有楽町「蚕糸会館」6階 特別会場

主催

松岡株式会社、
松岡機業株式会社、
有限会社タクティック&カンパニー

協賛

社団法人日本絹業協会

編集協力:農林水産省畑作振興課、農畜産業振興事業団