第97号(平成14年2月1日)

第23回国際絹業協会(ISA)大会開催される

社団法人 日本絹業協会

 第23回国際絹業協会大会は、インド南部地方の カルナタカ州都のバンガロールにおいて、2001年12月3日から6日の4日間にわたって開催されました。

 国際絹業協会(ISA) は、繭、生糸、絹織物、衣料など絹製品等の製造業者やこれらの取引業者などシルクに係わる人達の集まりで、1948年(昭和23年)に設立されました。本部はフランスのリヨンに置かれています。国際絹業大会は2年毎に、開催され、シルクの生産諸国と消費諸国の双方にとって意見交換をするための、国際的な場となっています。大会には21ヶ国から190余名が参会し、日本からは日本絹業協会会長吉國隆氏を団長として、総勢10名が参加しましたので、その概要を紹介します。

吉國会長が日本代表としてスピーチ

 大会初日にフォーラム(公開討論会)が開催され、主要各国代表による各国の近況報告が行われました。日本からは日本絹業協会の吉國貴重が日本を代表して日本の蚕糸・絹業の現状と新しい取り組みなどについて次のような主旨を紹介しました。

 日本は生糸の生産量は減少を続け、シルク製品の総消費量もきものの消費減により減少しているもの、世界第二位の消費国であること、その絹消費量全体の中で、今でもきものや伝統衣装の消費が40%を占め、その生産が加工や染色工程において伝統的な方法に依存し、依然として国産品への選考が強いこと。

 こうした中で、伝統文化としての産業を守るためにきものやその関連産業は効率化を図るだけでなく、縦型の協力体制あるいは、製造段階の総合によって、きもの産業自体の構造改革の必要性を唱える声が高まっていること、その動きとして、東京の大手デパートと群馬県の製糸工場の取り組み事例を紹介した。

 特に、皇太子妃雅子様のご出産2日後であったこともあって、皇后美智子様がご自身で育て上げられたカイコから採られた繭から赤ちゃん用の着物を作られた話をすると満場の拍手が起こった。

 また、蚕糸科学研究所が開発した無撚しるく、扁平光沢生糸などの新素材や新たな展開としてシルクを用いた食品、化粧品の商会に大きな関心が集まった。

国際生糸取引について

 横浜商品取引所の鷲野理事長は、2日目の生産部会で同取引所が昨年から始めた国際生糸先物取引の目的と機能を紹介しました。国際生糸先物取引については、海外からの市場参加を更に容易するため日本円で行われている取引を米ドル建ての取引に変更するよう準備中であること、授渡地の追加の検討中であること等を紹介すると大きな反響があり、その実現に向けて要望も出された。

 また、地元新聞記者の取材を受け、12月8日付けのThe Financial Express(インドの経済新聞紙)に「日本の横浜商品取引所でドル建てによる生糸の先物取引が始まる。」の見出しで記載されました。

生糸品質をめぐる問題

 需給改善(需要開拓)及び品質の問題はISA大会の度に議論の中心になっています。特に品質に関する議論は、生糸のみならず、絹紡糸、撚糸等すべてのシルク原材料の分野で活発に行われました。特に、ヨーロッパの参加者からは、輸入生糸の品質と検査表示が一致しないとか、絹紡糸の品質にも強い不満がでました。日本から、独立行政法人農林水産消費技術センター横浜センター長・草野洋一氏が「生糸の非破壊検査機械の開発の状況及び従来の検査との比較データー」について発表しました。この発表は、生糸の品質格付けの問題解決に、この機械が寄与されるのではないかとのヨーロッパの参加者から、強い関心が寄せられ、検査に関する事柄に質問が寄せられました。

世界の繭、生糸・織物について

 2000-01年の世界のシルクの需給状況は概ね良好でありました。シルクの生産は世界10カ国の合計で8万トンを上回りました。うち、中国が全体の75%を占め、次いでインドが18%を占めています。また、生糸輸出国であるブラジルやウズベキスタンの生糸生産も好調とのことです。しかし、消費面ではIT産業の不況などによる世界経済の停滞、特に、昨年(2001年9月11日)の米国の同時多発テロによる、経済の悪化がシルクの消費に影響が懸念させるとの報告もありました。

主な国の状況

【中国】

 1999年の桑園面積は60万ヘクタールで41万トンの繭を生産し、2000年における桑園面積は61万6000ヘクタール、2001年には62万2000ヘクタールです。繭生産は2000年に48万トン、2001年に50万トンであった。絹織物生産も増加しており、2001年1月から9月の絹織物の生産は34億メートル、染色及び捺染色物の生産は13億500万メートルで、2000年の同期に比べ、それぞれ13%と16%増加しています。

【インド】

 インドは15,000トンを超える生糸生産レベルを持つ、中国に次ぐ世界第2位のシルクの生産国です。また、世界最大のシルクの消費国であり、5000トン以上の生糸を主に中国から輸入している。インドでは、世界の全ての種類の蚕を飼育しており、そのいくつかはインド占有種です。家蚕シルクは、国の南部、西ベンガル、北部のジャンム、カシミールに集中しており、全体の99%を生産しています。タサール蚕は国の北部の亜ヒマラヤ区域において生産されています。エリ蚕は、北部で盛んに飼育されており、ムガシルクは またの名をゴールドシルクと呼ばれ、Brahmaputra流域の特定の土地で飼育されています。

【ブラジル】

 1999-2000年のブラジルの生糸生産量は天候不良により減少したものの、2000-2001年は生産量の回復が見込まれました。2000年のブラジル製糸業界は質・量ともに楽観的な見通しであったが、年末になって最大の顧客である日本の織物業者のしんにょう不安による影響を受けました。しかし、ヨーロッパのファッション業界が好調で、日本市場向けのマイナスを補ったため、最終的には平年並みの収支となった。2000年のブラジルの生糸及び絹撚糸の生産量は1,474トン、内、73%は日本へ、15%はヨーロッパへ、10%は米国へ輸出されました。また2001年については1,365トンと推定されています。

【ウズベキスタン】

 ウズベキスタンでは現在3万人の人々がシルク産業に従事しており、7つの外国との合併企業と2つの研究所を含め、2,154の会社があります。国は南及び極東アジア、米国及びヨーロッパとの貿易を確率しました。3A生糸の生産も開始され、世界使用へウズベキスタンシルクを振興するため、高品質シルクの生産に向けた計画が実施されています。

【イタリア】

 2000年のイタリアのシルク産業は絹糸と絹織物の輸出が好調であったため、シルクの国内需要が高まり、絹糸の中国からの輸入も増大し、前年比でほぼ80%増の971トンでした。絹織物の市場も好調で、とりわけ婦人用絹衣料の部門が活発でした。

【フランス】

 フランスtのシルク産業はオートクチュールに代表されるように、その高い創造性とサービスによって好調です。生糸の輸入は238トンに上昇し、イタリアからの絹撚糸の輸入も上昇に転じています。

シルクの宣伝・教育について

 シルクの宣伝・啓蒙活動について、国際絹業協会は、教育に焦点を当てたWEB歳との構築を2002年中に行うことが了承されました。内容は絹業の教育的な資料、蚕の成長の商会、シルクの加工の様々な段階及び関連サイトへのリンクになる予定です。


「野村シルク織物新作展」に寄せて

染織家  吉岡 幸雄

 人間が長い歴史のなかで、身にまとってきた衣類。それははじめ、麻、藤、楮<こうぞ>などの草や樹の皮を裂いて細かくしたもの、あるいは、木綿の木が自分たちの子孫である種子を保護するために包む綿を紡いて糸にしたものを、一枚の布にしたものであった。

 古代中国では、蚕がみずからこもる繭を作るために口から吐いた細い糸を、湯に浸けて引き出し、絹織物が発明された。

 蚕が吐き出す糸の長さは、繭一個で約千四百から千五百メートルもある。しかし、一本の糸の太さははじめと終わりでは二対一くらいの差がある。そこで、八本から十本を合わせていくと整った糸となる。しかも、繊維は透明で澄んだ美しさをたたえている。そして、なによりも、自然の草樹から採り出した染料にきわめてよく染まる。

 中国で使用されるようになった絹と、それから生まれる美しい彩りの綿は、世界の人々の垂涎の的となった。その綿への憧れが、絲綢之路の道となって開けたのである。

 やがて、絹の技術は日本へ伝えられた。今をさかのぼること二千年近く前、各地に養蚕の技術がもたらされたのである。

 

 四国の西南部、カルスト高原から起伏に富んだ景色が織り成す美しい自然がひろがる野村町では、その大地が桑の木をはぐくんで、養蚕が盛んになったのである。

 現代の生活の変化はめまぐるしく、長い長い伝統を誇る絹の生産は、近年衰退の一途をたどっている。だた、ひとり野村町は、町を上げての事業としてそれを守りつづけている。しかも蚕を育て、繭を作って売るだけではなく、町内に世界の絹織物を集めたシルク博物館を建て、絹の知識の宝庫としている。されに、町内、県内はもとより、全国から染色講座受講生を募集し、絹研究家志村明氏の古式に則った座繰りの技術と織物指導により、二十一世紀の日本人にあった美しい絹の製品をつくりだしているのである。

 このたび、東京、有楽町の蚕糸会館のジャパンシルクセンターにおいて、そのような志村明氏と染色講座受講生たちの成果を披露する機会がもうけられることとなった。

 多くの方々にご来場いただき、日本の絹の伝統を守りつづける野村町の「絹の美」をとくとご覧いただきたいと願うのである。

イ ベ ン ト 情 報
21世紀の輝き
野村シルク織物新作展
絹の里・愛媛県野村町で糸を紡ぎ一本一本を
丁寧に染めあげ、手機にかけて織りあげた
絹の作品 ショール きもの 着尺 服地・・・など。
このたび東京でご覧いただくことになりました。
この機会にぜひ野村シルクの輝きに触れてみてください。
と き3月11日(月)〜14日(木)10:00〜18:00
15日(金)10:00〜15:00

ところ有楽町 ジャパンシルクセンター

主 催野村町

協 賛株式会社 野村町地域振興センター

トータルコーディネート吉岡幸雄

編集協力:農林水産省畑作振興課、農畜産業振興事業団