第99号(平成14年4月1日)

生糸から縫製加工まで一貫生産体制による商品開発に取り組んで

(有)タクティック&カンパニー 代表取締役社長 田辺茂作

 私どものタクティック&カンパニーは国産シルクにこだわり、国産の生糸をテーマに掲げて顧客の方々がよりナチュラルに心の“癒し”を忘れずに生活する、そんなシーンを新たな切り口として商品を企画し提案してきました。

 今回、130年の歴史を有する松岡企業グループとの共同企画により製糸−製織−染色加工−縫製加工の一貫生産体制によって上質なカジュアルを目指した「ウェアー」、「ホームファニシング」、「シルクグッズ」などトータルな衣料の商品開発に取り組んできましたが、今年の4月からジャパンシルクセンターで展示販売をすることまでになり、消費者の方々から大変な好評をいただいています。

 農林水産省では、これまで長年にわたって繭生産から製糸、製織、製品等の「ものづくり」まで、いわゆる川上から川下にいたる企業間の提携システムによる製品の開発を推進してきましたが、これまで取り組まれた企業間の提携では、群馬県の製糸工場と東京の大手のデパートが提携して開発した商品がありますが、洋装の多品種の商品を店頭展開までもてきたのは、私どものグループが初めてではないかと思っています。これは、伝統と優れた技術の蓄積を有する松岡企業グループという優れたパートナーにめぐり会えたから出来たと感謝しております。

 松岡企業グループは、明治5年に庄内藩の松ヶ岡に開墾事業として出発した企業集団で製糸業を主力事業としてきた松岡株式会社と縫製事業を主としている松岡機業株式会社等で構成されており、製糸から織物、縫製加工と一気通貫での事業システムを持っているのは外にないと思います。松岡株式会社は、これまで良質の生糸を生産することで知られている会社ですが、また、非常に細い繊度の生糸、新ハイブリッドシルクなど新しい素材の開発にも熱心であります。今回、開発した商品の一つに「スーパーフラットシルク」を用いた商品がありますが、これも蚕糸科学研究所が開発した新しい素材を基に松岡で生産し、タクティック&カンパニーと松岡グループが協同で商品化したものです。「スーパーフラットシルク」の開発研究の取り組みのきっかけは、生糸の欠陥を商品に結びつける逆転の発想からと聞いています。と申しますのは、生糸の場合「へんぺい糸」は生糸の繰糸で人為的なミスにより引き起こされた欠陥の生糸であります。この「へんぺい糸」は光沢がありますので、繊維の素材として特徴のある製品に用いることが出来ないかとの発送から、「扁平光沢生糸」の開発が取り組まれたということです。

 この扁平光沢生糸は、普通生糸に比べ、コシ、ハリ、シャリ感に特徴がある繊維で合ったのです。また、光沢は紋縮緬や縫取り紋に扁平光沢生糸を織り込むと光沢が強く、紋様が強く浮き出て織物にとって特徴のある製品が出来ることが分かったとのことです。

 このような特徴のある「扁平光沢生糸」は松岡株式会社で、この糸の工場生産規模での開発とその商品化の取り組みが行われました。商品化では呉服分野で帯、洋装分野で特徴のある製品について検討が行われました。今年の春夏の洋装分野での注目素材はナチュラルな素材の表面を押しつぶして平面にし、フラットであるが奥行きのある繊維素材とのことです。まさにこの業界が目指しているのが「扁平光沢生糸」です。松岡株式会社は蚕糸科学研究所の了解のもとに実用化を行い「スーパーフラットシルク」として商品化を行いました。 

 この糸の洋装で特徴は経て糸に生糸、緯糸に扁平光沢生糸・綿・カシミヤ等を用いますと落ち着いた感じも良く高級感のある衣服ができました。この衣服の商品化と販売は当社「タクティック」が主に当たることになりました。商品の展示販売会が平成13年7月に東京有楽町の蚕糸館で行われ、大変な好評を得ました。この「スーパーフラットシルク」の生産販売の体制整備をはかるため、「山形県シルク新素材振興協会」が組織されました。まゆ、生糸、織物、販売等の一貫した組織の下に生産販売戦略を担うグループです。

 東京の大市場での商品展開と消費者ニーズの吸収を積極釣行うために「ジャパンシルクセンター」に店頭展開をしています。この試みで日々の消費者の動向を商品企画に生かす環境ができました。

 当社は今後、洋裁分野でこの「スーパーフラットシルク」を用いた製品を消費者に提案します。「2003年S/S展示会」を今年7月に東京有楽町の蚕糸会館で開催するよう計画進めています。これに併せてジャパンシルクセンターの協力で、国産シルクを素材にした製品メーカーが参加した「2002年A/w展示販売会」を開催します。


第3回東京シルク展を開催して

多摩シルクライフ21研究会 小此木エツ子

 多摩シルクライフ21研究会では、概略次のような活動を行っています。

(1)東京ブランドシルク事業の推進

 絹の多様化・高品質化に向けて、蚕品種の改良をはじめとする養蚕、製糸、撚糸、染織にたづさわる人々が相互に綿密な連携を図りながらより良い絹づくりのための研究を進める。

(2)小学校教材用蚕種の配布(都内役150校)と総合科目授業への参加。

(3)一般市民への各種絹素材づくりの公開講座の開講。

(4)各種絹の加工方法および新製品開発研究

 養蚕・製糸の過程で出る副蚕糸・毛羽、切繭、緒糸等の新精練・染色方法を始め、各種絹素材を用いて、多用でユニークな飾り物、組みひも、小物、帽子、ベスト、レース、シルクスクリーン、洋装品等の新製品を開発している。また、最近は、外部企業や研究機関と連携して、ユニバーサルファッションの製品開発にも協力しています。

 以上のような活動成果の発表の場として、2年に1回、東京シルク展を開催していますが、今年は第3回目にあたるので、従来の写真・パネル・製品展示とつむぐ、組む、絣整経等の実演に加えて、来場者とより密接な交流を図るため、一人一人の作り手の製品作りへの想いや手法をくわしく語ってもらう、フロアトークとミニファッションショーを開催いたしました。

 研究会の特に和装の物作りは「伝統を重んじる」ということが重要なテーマとなっています。従って、多摩織元の中山素次郎先生、草木染め、月明織の山崎桃麿戦死を中心とする約40人の会員の染と織には、伝統を重んじながらその上に、独特な新しい工夫や想い入れが込められていて趣きのある作品が多くあります。それら一点一点について、フロアトークやファッションショーで詳しく紹介されました。作品名は次の通りです。

 唐花丸草紋緯錦(復元製)、貝紫染、あかにし貝・手描金泥ストール、村山大島紬型絵染付下げ、槐染紬着物、小石丸平織着物、月明織紬着物、絣畝織小袖(他小袖2点)、よろけ晝夜織振袖、絣織紬着物、紋塩瀬絞型絵帯、村山大島手描友禅着物、らくちん兵児帯、のめし平織着物他ですべてが東京シルク素材を用いた草木染で手織りの作品ばかりでした。

フロアトーク&ミニファッションショーを終えて

1)素材や染色加工の良さは、人が着用し、美しく行動して初めてその真価を発揮することが改めてよくわかりました。 

 当研究会会員は、和装にかけては有能な作り手であると同時に、着こなしのセンスの良い方々ばかりです。当日のショーでは、まず色彩の美しい錦や貝紫染ストール、型絵染着物・帯等は黒装束に身を包んだ黒子達の手によって来場者のすぐ傍まで運ばれ、手に触れながら作品を感じて頂いた。次いで、自らの作品をまとった会員が“町娘でお散歩”という風な演出から、仕舞、日本舞踊、雅楽舞の所作等を作品の内容に合わせて取り入れてお披露目する等、まことに個性的で優雅でしかも楽しいショーが開催されました。

2)ファッションショーとなると、一般的にはデザイナー、プロデューサー、モデルが高いステージに上がり、スポットライトをあびながら華やかに紹介されるのが常です。従って、どんなに有能な作り手が作品作りに拘わっても紹介されることは先ずありません。特に絹製品の品性を決定づける・・・と云っても過言でない素材の良否が、ほとんど無視されています。

 しかし私どものブランドシルク作品は、それに関わった養蚕、製糸、撚糸、精練、染織等すべての人達の思いと技が込められている・・・と云う考え方に立ってその作品をとらえています。

 また、そのことが真の「和の文化」であると考えています。

 今回のショーで作り手と同じ目線で、しかも極く間近な位置から作品をごらんになった来場者の方々も、作品作りに拘わった多くの作り手達のその波動を感じ取ってくださり、ある種の共感と感動を覚えてくださったに違いないと思っています。

 たまたま今回のショーを終始ご覧になっておられた小泉清子先生(「利家とまつ」などNHK大河ドラマで衣装の時代考証を担当しておられる方)が、見終わって「素晴らしい!!、よかった!!」と大変ほめてくださったので、私どもも大きな結城を持つことができました。

 終わりに、今回のショーを開催するに当たり、音楽、着付、化粧などすべてをプロデュースしてくださった方々や、ショーに友情出演してくださった方々の大きなお力添えを頂いたことが今回の成功につながったことをここにご報告し、ご協力くださいました皆様に心より厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

 平成13年10月4日〜7日にかけてのセイコきもの美術館、鈴乃屋ホールでの第3回東京シルク展は、私共にとって次に進むための大きなステップとなったことをご報告して結びの言葉といたします。

イ ベ ン ト 情 報

岡正子 2002-2003 秋冬コレクション

と き  5月8日(水)〜10日(金)10:00〜19:00

ところ  蚕糸会館6階 千代田区有楽町1-9-4

お問い合わせ先  03-3622-6866

編集協力:農林水産省畑作振興課、農畜産業振興事業団